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星の蒼さは 132

[703]  金太郎  2008-10-18投稿
鋼鉄と鋼鉄がぶつかり合い、その度に夜空に赤い火花を散らす。

エカチェリナの駆る【イヴァン】と桜花(インホア)の【天童】の空中戦は激しさを増していた。

【天童】の持つ二ふりの対艦白熱刀が【イヴァン】の肩を焼けば、【イヴァン】の高電圧槍が稲光を吐き、【天童】の電子機器にダメージを与える。

機体性能は互角。

だが、腕と経験には埋めがたい差があった。

北極戦役、東欧戦線。

十歳で騎士となり、七年間最前線で槍を振るい、総撃破数は二百を軽く越え、その実力は帝国最強の騎士“白帝”に次ぐとされるエカチェリナ・テファロフを前に、桜花は機体に確実に致命傷を負わされていた。

「んッだよ!!当たらねェよ畜生!」

頭に血が登った桜花には、ダメージ蓄積量の増大を警告する機体からのメッセージは届かなかった。

「死ね!」

業を煮やした桜花(インホア)は至近距離から【天帝圧縮粒子砲】を撃とうと照準を合わせ、トリガーを押し込んだ。

が、それが放たれる事はなく、画面の向こうには相変わらず銀色のWWが槍を構え、見下しているだけだった。

「何よ!撃たねェ?」

桜花は、そこで初めて【天帝圧縮粒子砲】が搭載された肩部が破壊されている事に気付いた。

<闘いに夢中で周りはおろか自分の事まで見失うとは情けないわ>

圧倒的優位に立たれた事に対する苛立ちと、見下されている事に対する屈辱で、桜花は吠えた。

「黙りやがれ!その態度がムカつくんだよ!!」

<その言葉づかいを直して出なおしなさい!>

槍を構えて一直線にこちらに突撃してくる【イヴァン】を、桜花はただ睨み付けるしかなかった。

稲光まとう穂先が【天童】の頭部を“串刺し”にしようとした時だ。

<周りが見えていないのは貴女も同じだね>

黒い光がほとばしり、【イヴァン】の右腕を奪い去った。








ピピッと何かの時間を告げるアラームが鳴り響いた。

「おっと失敬」

駆け出してすぐ立ち止まり、腕時計のアラームを切って二ノ宮は舌打ちした。

「悪ィ、時間だ」

頭を掻き、興ざめしたように首を回す。

「京一。時間だわ、帰るな」

「何!?」

さすがの狩野も動揺を隠せない、だが、二ノ宮は笑った。

「わかってる。土産は無くてもよろしい」

ヘラヘラと笑っていた顔が一瞬で真顔になり、男はアキを指差した。

「こいつ貰ってくから」

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