星の蒼さは 132
鋼鉄と鋼鉄がぶつかり合い、その度に夜空に赤い火花を散らす。
エカチェリナの駆る【イヴァン】と桜花(インホア)の【天童】の空中戦は激しさを増していた。
【天童】の持つ二ふりの対艦白熱刀が【イヴァン】の肩を焼けば、【イヴァン】の高電圧槍が稲光を吐き、【天童】の電子機器にダメージを与える。
機体性能は互角。
だが、腕と経験には埋めがたい差があった。
北極戦役、東欧戦線。
十歳で騎士となり、七年間最前線で槍を振るい、総撃破数は二百を軽く越え、その実力は帝国最強の騎士“白帝”に次ぐとされるエカチェリナ・テファロフを前に、桜花は機体に確実に致命傷を負わされていた。
「んッだよ!!当たらねェよ畜生!」
頭に血が登った桜花には、ダメージ蓄積量の増大を警告する機体からのメッセージは届かなかった。
「死ね!」
業を煮やした桜花(インホア)は至近距離から【天帝圧縮粒子砲】を撃とうと照準を合わせ、トリガーを押し込んだ。
が、それが放たれる事はなく、画面の向こうには相変わらず銀色のWWが槍を構え、見下しているだけだった。
「何よ!撃たねェ?」
桜花は、そこで初めて【天帝圧縮粒子砲】が搭載された肩部が破壊されている事に気付いた。
<闘いに夢中で周りはおろか自分の事まで見失うとは情けないわ>
圧倒的優位に立たれた事に対する苛立ちと、見下されている事に対する屈辱で、桜花は吠えた。
「黙りやがれ!その態度がムカつくんだよ!!」
<その言葉づかいを直して出なおしなさい!>
槍を構えて一直線にこちらに突撃してくる【イヴァン】を、桜花はただ睨み付けるしかなかった。
稲光まとう穂先が【天童】の頭部を“串刺し”にしようとした時だ。
<周りが見えていないのは貴女も同じだね>
黒い光がほとばしり、【イヴァン】の右腕を奪い去った。
ピピッと何かの時間を告げるアラームが鳴り響いた。
「おっと失敬」
駆け出してすぐ立ち止まり、腕時計のアラームを切って二ノ宮は舌打ちした。
「悪ィ、時間だ」
頭を掻き、興ざめしたように首を回す。
「京一。時間だわ、帰るな」
「何!?」
さすがの狩野も動揺を隠せない、だが、二ノ宮は笑った。
「わかってる。土産は無くてもよろしい」
ヘラヘラと笑っていた顔が一瞬で真顔になり、男はアキを指差した。
「こいつ貰ってくから」
エカチェリナの駆る【イヴァン】と桜花(インホア)の【天童】の空中戦は激しさを増していた。
【天童】の持つ二ふりの対艦白熱刀が【イヴァン】の肩を焼けば、【イヴァン】の高電圧槍が稲光を吐き、【天童】の電子機器にダメージを与える。
機体性能は互角。
だが、腕と経験には埋めがたい差があった。
北極戦役、東欧戦線。
十歳で騎士となり、七年間最前線で槍を振るい、総撃破数は二百を軽く越え、その実力は帝国最強の騎士“白帝”に次ぐとされるエカチェリナ・テファロフを前に、桜花は機体に確実に致命傷を負わされていた。
「んッだよ!!当たらねェよ畜生!」
頭に血が登った桜花には、ダメージ蓄積量の増大を警告する機体からのメッセージは届かなかった。
「死ね!」
業を煮やした桜花(インホア)は至近距離から【天帝圧縮粒子砲】を撃とうと照準を合わせ、トリガーを押し込んだ。
が、それが放たれる事はなく、画面の向こうには相変わらず銀色のWWが槍を構え、見下しているだけだった。
「何よ!撃たねェ?」
桜花は、そこで初めて【天帝圧縮粒子砲】が搭載された肩部が破壊されている事に気付いた。
<闘いに夢中で周りはおろか自分の事まで見失うとは情けないわ>
圧倒的優位に立たれた事に対する苛立ちと、見下されている事に対する屈辱で、桜花は吠えた。
「黙りやがれ!その態度がムカつくんだよ!!」
<その言葉づかいを直して出なおしなさい!>
槍を構えて一直線にこちらに突撃してくる【イヴァン】を、桜花はただ睨み付けるしかなかった。
稲光まとう穂先が【天童】の頭部を“串刺し”にしようとした時だ。
<周りが見えていないのは貴女も同じだね>
黒い光がほとばしり、【イヴァン】の右腕を奪い去った。
ピピッと何かの時間を告げるアラームが鳴り響いた。
「おっと失敬」
駆け出してすぐ立ち止まり、腕時計のアラームを切って二ノ宮は舌打ちした。
「悪ィ、時間だ」
頭を掻き、興ざめしたように首を回す。
「京一。時間だわ、帰るな」
「何!?」
さすがの狩野も動揺を隠せない、だが、二ノ宮は笑った。
「わかってる。土産は無くてもよろしい」
ヘラヘラと笑っていた顔が一瞬で真顔になり、男はアキを指差した。
「こいつ貰ってくから」
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