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夜に咲く華〜その27〜

[313]  岬 登夜  2008-10-21投稿
男達はせせら笑う。

「うちの店?ここはお前さんの店でなく、今からうちの組のもんだ」

「権利書だってある。ここは私の店だ」

男達はそれを聞いてゲラゲラ笑う。一人の男が健吾に紙束を投げ付ける。

「お前の借金の形に取られたんだよ」

健吾は束の借用証を広げる。

「紅が…、紅が何とかしたって話だったのに…?」

「何ともなっちゃいない。少しづつ返済していたんだがもう無理だと昼間来ていったのでうちで引き取る事にしたんだ。さあ、権利書をよこしな」

男の一人が胸ぐらを掴む


「ま…、待て。私は大河内と知り合いだぞ」

胸ぐらを掴んでいた男の手が止まる。

「そうだ。お前らだって名前位聞いたことがあるだろう?大河内清麿。政界の大物だぞ」

男の顔が笑う。

「俺の知り合いに大河内清麿と名乗り詐欺を行う男がいるんだが、さっき 吉原にいるところを捕まったって聞いたぜ」

「さ…詐欺…?私はあいつ…に…権利書を…」

健吾は懐にしまった短銃を取り出した。

男達が怯んだ隙に走り逃げる。

「待て!!」

男達が後を追い掛けるが姿を見失う。



紅達一行は吉原の外の年期開けの遊女達の為の宿に身を寄せていた。ここは表向き遊郭とは関係を絶って存在しているので経営に関わっていなかった健吾は知らない場所だった。

「ごめんなさいね、雪さん。こんな大勢で押しかけて」

紅の祖父母の代からこの宿を仕切ってきた雪は笑った。雪も元遊女ながら長い年月がただの初老の婆に変えていた。

「構いませんて。落ち着くまでゆっくりとしていってください。先程お医者も来まして診ていかれましたよ」

紅は2階へと急いだ。

大広間に紅華楼の面々が集まっていた。

「紅お嬢さん!」
「紅ちゃん!」

妙とあやめが近づいてくる。

「怪我はないかい?」
「ご無事で…」

泣き出した妙を見て上手くいったのだと紅は安堵した。

「連二郎は?」

紅の言葉にあやめは笑う。
「うちらはこの広間と隣に男と女に別れるとして紅ちゃんにはこの奥の部屋を用意してもらったよ。そこに連二郎さんもいるから」

紅は頭を下げ奥に急ぐ。奥は手前の大部屋と違い個室になっている。

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