ヨシノケ ラヴストーリー 1.雨の季節に
「私が好きになる人は、みんなどこか遠くに行っちゃうの。
もう、誰のことも好きになんてなりたくないよ」
2008年6月末。
牛丼なんて見たこともなかった私が、ヨシノケで働くことになった。
派遣でこの店に来ることが決まったのだが、お洒落なカフェのキッチンを希望していたのでまさか牛丼屋になるとは思ってもみなかった。
面接の日は雨で、気分は最悪だった。
しかし、文句やワガママを言っていられる状況ではなかった。
東京に越してきたばかりで、貯金もほとんどなく、仕事を選んでいる場合ではなかったのだ。
金がないと、気持ちに余裕もなくなる。
彼氏のテツとも上手くいかなくなってきていた。
テツとは、6月の半ばまで遠距離だった。
私のために、1ヵ月間だけ東京に来てくれることになっていたのだが、何故か予定が狂い、7月になったらまた離れることになってしまった。
短い間しか一緒にいられないなら、その時間を大事にしたい。ケンカなんかで時間を無駄にしたくないと思っていた。
だから、テツがどんなに帰って来る時間を守らなくても、デートの約束をすっぽかしても、自分の気持ちを押し殺して、適当に笑って流してしまっていた。
そんなことを続けているうちに、彼との距離はますます離れていった。
そんなこんなで迎えた面接の日。
オハヨウゴザイマス、と、作り笑顔で店に入っていった。
休憩室にいた店員に軽く会釈したら、挨拶を返された。
緊張と不安で頭がゴチャゴチャだったのか、あの店員がどんな顔で挨拶したのかまったく覚えていない。
わけも分からず気がついたら面接も終わっていた。
休憩室にいた、あの店員…。
はっきり覚えていないけど、あれがミノルと出会った瞬間だった。
もう、誰のことも好きになんてなりたくないよ」
2008年6月末。
牛丼なんて見たこともなかった私が、ヨシノケで働くことになった。
派遣でこの店に来ることが決まったのだが、お洒落なカフェのキッチンを希望していたのでまさか牛丼屋になるとは思ってもみなかった。
面接の日は雨で、気分は最悪だった。
しかし、文句やワガママを言っていられる状況ではなかった。
東京に越してきたばかりで、貯金もほとんどなく、仕事を選んでいる場合ではなかったのだ。
金がないと、気持ちに余裕もなくなる。
彼氏のテツとも上手くいかなくなってきていた。
テツとは、6月の半ばまで遠距離だった。
私のために、1ヵ月間だけ東京に来てくれることになっていたのだが、何故か予定が狂い、7月になったらまた離れることになってしまった。
短い間しか一緒にいられないなら、その時間を大事にしたい。ケンカなんかで時間を無駄にしたくないと思っていた。
だから、テツがどんなに帰って来る時間を守らなくても、デートの約束をすっぽかしても、自分の気持ちを押し殺して、適当に笑って流してしまっていた。
そんなことを続けているうちに、彼との距離はますます離れていった。
そんなこんなで迎えた面接の日。
オハヨウゴザイマス、と、作り笑顔で店に入っていった。
休憩室にいた店員に軽く会釈したら、挨拶を返された。
緊張と不安で頭がゴチャゴチャだったのか、あの店員がどんな顔で挨拶したのかまったく覚えていない。
わけも分からず気がついたら面接も終わっていた。
休憩室にいた、あの店員…。
はっきり覚えていないけど、あれがミノルと出会った瞬間だった。
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