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隙間 2

[771]  レア  2008-11-01投稿
患者の名前は山崎薫。
先月この大学病院に入院してきた。

運ばれて来た時には錯乱状態で、仕切りに「隙間が…」と言っていた。

当初は、その状態から薬物による中毒症状かと思われたが、薬物検査の結果は陰性だった。

その後も様々な検査が行われたが、特に異常は見つからず結局医師は彼女に『自律神経失調症』と言う病名を与えたのだ。

それから一か月。
薬の投与をしても彼女に回復の兆しは見られず、最近では病状が悪化していた。

「どうした物かね…。例の患者さん悪化してるらしいじゃないか…。」

「もう少し安定剤の量を増やしてみましょうか…?」

「ん〜。彼女の場合、今の投与量がギリギリだろ。」

医師達は困っていた。
入院してからここまで、状態が悪くなるなんて彼等のメンツにも関わっていたからだ。

四苦八苦した結果、医師達は彼女に新しい治療法を試みる事にした。『催眠療法』彼女の心に何が起きているのか知ろうとしたのだ。


薄暗い診療室に、虚ろな目の山崎薫がナースに支えられて入って来る。

背もたれの広い椅子に座らせられ、彼女はただ一点を見つめたままピクリとも動かない。

「山崎さん、今から治療を初めましょう。」

顎鬚を蓄えた医師は優しく彼女に微笑んだ。

彼女は無表情のままとても小さく頷く。

「さぁ、私の指を見て。」

ゆっくりと彼女の視線の先に指を翳し、医師は彼女を誘導して行く。

「ゆっくり目を閉じて。深く息を吸って…吐いて…。」

彼女は徐々に催眠状態へと入って行った。



「さぁ、私が数を三つ数えたらアナタは、此所へ運ばれて来る前の時間の中にいます。いいですか…。
1 2 3」


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