隙間 2
患者の名前は山崎薫。
先月この大学病院に入院してきた。
運ばれて来た時には錯乱状態で、仕切りに「隙間が…」と言っていた。
当初は、その状態から薬物による中毒症状かと思われたが、薬物検査の結果は陰性だった。
その後も様々な検査が行われたが、特に異常は見つからず結局医師は彼女に『自律神経失調症』と言う病名を与えたのだ。
それから一か月。
薬の投与をしても彼女に回復の兆しは見られず、最近では病状が悪化していた。
「どうした物かね…。例の患者さん悪化してるらしいじゃないか…。」
「もう少し安定剤の量を増やしてみましょうか…?」
「ん〜。彼女の場合、今の投与量がギリギリだろ。」
医師達は困っていた。
入院してからここまで、状態が悪くなるなんて彼等のメンツにも関わっていたからだ。
四苦八苦した結果、医師達は彼女に新しい治療法を試みる事にした。『催眠療法』彼女の心に何が起きているのか知ろうとしたのだ。
薄暗い診療室に、虚ろな目の山崎薫がナースに支えられて入って来る。
背もたれの広い椅子に座らせられ、彼女はただ一点を見つめたままピクリとも動かない。
「山崎さん、今から治療を初めましょう。」
顎鬚を蓄えた医師は優しく彼女に微笑んだ。
彼女は無表情のままとても小さく頷く。
「さぁ、私の指を見て。」
ゆっくりと彼女の視線の先に指を翳し、医師は彼女を誘導して行く。
「ゆっくり目を閉じて。深く息を吸って…吐いて…。」
彼女は徐々に催眠状態へと入って行った。
「さぁ、私が数を三つ数えたらアナタは、此所へ運ばれて来る前の時間の中にいます。いいですか…。
1 2 3」
先月この大学病院に入院してきた。
運ばれて来た時には錯乱状態で、仕切りに「隙間が…」と言っていた。
当初は、その状態から薬物による中毒症状かと思われたが、薬物検査の結果は陰性だった。
その後も様々な検査が行われたが、特に異常は見つからず結局医師は彼女に『自律神経失調症』と言う病名を与えたのだ。
それから一か月。
薬の投与をしても彼女に回復の兆しは見られず、最近では病状が悪化していた。
「どうした物かね…。例の患者さん悪化してるらしいじゃないか…。」
「もう少し安定剤の量を増やしてみましょうか…?」
「ん〜。彼女の場合、今の投与量がギリギリだろ。」
医師達は困っていた。
入院してからここまで、状態が悪くなるなんて彼等のメンツにも関わっていたからだ。
四苦八苦した結果、医師達は彼女に新しい治療法を試みる事にした。『催眠療法』彼女の心に何が起きているのか知ろうとしたのだ。
薄暗い診療室に、虚ろな目の山崎薫がナースに支えられて入って来る。
背もたれの広い椅子に座らせられ、彼女はただ一点を見つめたままピクリとも動かない。
「山崎さん、今から治療を初めましょう。」
顎鬚を蓄えた医師は優しく彼女に微笑んだ。
彼女は無表情のままとても小さく頷く。
「さぁ、私の指を見て。」
ゆっくりと彼女の視線の先に指を翳し、医師は彼女を誘導して行く。
「ゆっくり目を閉じて。深く息を吸って…吐いて…。」
彼女は徐々に催眠状態へと入って行った。
「さぁ、私が数を三つ数えたらアナタは、此所へ運ばれて来る前の時間の中にいます。いいですか…。
1 2 3」
感想
感想はありません。