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ある対話

[500]  ケィ。  2008-11-03投稿
『先生、教えて下さい。この世界は何なのか。人は何のために生まれて、何のために死ぬのですか?』

『じゃあ君に、幾つかの答えをあげよう。
何が真実か、その判断は君に委ねる』

『世界は、神の創りたもうたまがい物、エデンの影だ。永遠なるものと対を為すよう滅びと再生を繰り返す。エデンが美しく調和を保つものであるように、醜いもの、混沌をもたらすものは全てこの世界にある。神が全知全能である事を証明するために。美しいものや調和しか生み出せない神は、不完全だから。神は悪魔を超えるものなのだから、悪魔のなせる業というのは当然神にも出来る訳だ』

『次に世界とは、ただの法則だ。地球は太陽の周りを廻り、太陽は巨大な熱を放つ恒星という物質。水は熱によって蒸発し水蒸気となり、植物は光を受けて光合成する。人間もまた、独自の法則を持ち、環境に影響を受けながら存在する物質だ。命というものも、ただ法則のままに作用しており、それが妨害されるか、自然に劣化すると停止する。転がる石が何かにぶつかって止まるか、その内摩擦により勢いを失って止まるように』

『最後に世界とは、幻だ。君の脳が造り出した映像であり、質感であり、匂いであり、味であり、音だ。君がもし脳に異常をきたしたら、世界は全く変わってしまうかもしれない。君が狂えば世界もまた狂う。もしかしたら別の世界に行けるかもね。世界は君が存在する故に君の周りに存在し、君の居ない場所には存在せず、故に君は世界の至るところに存在し、世界もまた在るべき姿で君を受け入れる』

『さて、ここまで話した上で、人が何のために生まれて死ぬか、だけど。
好きにすればいいんじゃない?意味とか価値とか、それって多分、人間の生み出したものだし。だったら、君が君にとって価値のある人間だったら、全然OKだと思うよ?』

『私にとって価値のある人間、ですか…。それを考えるのが一番難しいです』

『あはは、頑張って』

『あ、ひとつだけ注意しとくと、答えの出ない問題を考え過ぎると考えるのを止められなくなって頭がおかしくなるから気をつけてね』

『頭がおかしく?』

『そう、例えば鏡に向かって先生って呼んだり、ね』

『何を言ってるんです?
鏡に向かって話しているのは先生の方でしょう?』





… … …

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