エンブレム〜序章〜?―?
「よし、行くか」
そう独りごち俺は荷物をバッグに詰め家を出た。
森を歩くこと一時間。
目前に小さな洞窟が現れた。
「よし、着いた着いた」
中に入る。
…しまった、灯り持ってくるの忘れた。
…まあ、いいか。
すぐ出られるしな。
歩くこと三十分。
洞窟に光が差す。
数瞬、闇夜に慣れた目が拒絶反応を示したがすぐ治まった。
洞窟を抜けるとそこには小さな村一つなら収まるのではないかというほどの広大な空間が広がっていた。
周囲は壁に囲まれ、光が差しているというのに何処か暗い雰囲気が漂い、まるで世界から孤立してしまったかのような気分を味わわせてくる。
木々が生い茂り膝上まで伸びた雑草に覆われた大地。
その奥で空虚に投げ出された廃屋とテラス。
そして、所々にある枯れた花。
ここに初めて来た人がこの有り様を見たら大抵の人は『気味が悪い』と言ってすぐにこの場所を後にするだろう。
「…もう、花は咲かないんだよな…」
枯れ果てた花を見て七年前から毎年来る度呟いている言葉を口にする。
そして、俺は辺りを見渡した後、廃屋の傍にある二段重ねの石に近付き語り掛けるように言った。
「また…遊びに来たよ、桃」
続
そう独りごち俺は荷物をバッグに詰め家を出た。
森を歩くこと一時間。
目前に小さな洞窟が現れた。
「よし、着いた着いた」
中に入る。
…しまった、灯り持ってくるの忘れた。
…まあ、いいか。
すぐ出られるしな。
歩くこと三十分。
洞窟に光が差す。
数瞬、闇夜に慣れた目が拒絶反応を示したがすぐ治まった。
洞窟を抜けるとそこには小さな村一つなら収まるのではないかというほどの広大な空間が広がっていた。
周囲は壁に囲まれ、光が差しているというのに何処か暗い雰囲気が漂い、まるで世界から孤立してしまったかのような気分を味わわせてくる。
木々が生い茂り膝上まで伸びた雑草に覆われた大地。
その奥で空虚に投げ出された廃屋とテラス。
そして、所々にある枯れた花。
ここに初めて来た人がこの有り様を見たら大抵の人は『気味が悪い』と言ってすぐにこの場所を後にするだろう。
「…もう、花は咲かないんだよな…」
枯れ果てた花を見て七年前から毎年来る度呟いている言葉を口にする。
そして、俺は辺りを見渡した後、廃屋の傍にある二段重ねの石に近付き語り掛けるように言った。
「また…遊びに来たよ、桃」
続
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