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摩天楼 その30

[382]  river  2008-11-08投稿
死ぬつもりはなかった。
この中にタビトが紛れているかもしれない。
重い。圧迫感。
リリィは目を凝らしてタビトを探した。
ぼんやりと目に映る。
誰かの手、誰のものかは分からないけど
その手を掴んで力いっぱい引っ張った。少女の力ではびくともしないが、火事場の糞力というものか。
怪獣は苦しみもがく。リリィは腕と一緒に外に放り出された。
「あぁっ」
思いきり尻餅をついた。その瞬間、
怪獣の体がどっと雪崩のように崩れてドロドロと流れた。食べられた人々も一緒に落ちる。
リリィの掴んでいた手が離れた。持ち主は苦しそうに咳き込んでいる。
リリィははっとした。ヒオだ。
「あなたが呼んでたの?!」
「え??なにが?」
おえっ、と泥を吐き出してむせている。向こうでは同じように咳き込んでいる人や動かない人もいる。
「それよか、まだ出てなかったの?」
リリィはぬかるんだ地面に目を落とした。
「だって…」

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