携帯小説!(PC版)

摩天楼

[459]  river  2008-11-08投稿
知らん顔して街から出て行けばよかったのに。
「…だって…」
はっきり理由を口にすることができなかった。
「マーチならここにはいないよ」
リリィはうつ向いたままだ。ヒオは空に伸びる巨大な影に目をやった。

影に向かって走っても近づかない。

どれだけの時間が経っただろうか。
ピアニストだった時間が遠い昔のよう。
「ねぇ、あたしもつれてって」

灰色の曇った空にどす黒い摩天楼
街のビルとは比にならない。透き通るような美しさ。高い高い怪獣の触手が伸びてリリィを飲み込んだ。

流される。青い血の川。ビーズのような宝石のような。本当はもっとずっと汚ないもの。
気付くと少しだけ土っぽい手を掴んでいた。

(…あなたなのね)

さっきの圧迫感が嘘のようだ。夢を見ているみたい。
手をたぐりよせると、現れたのは
タビトだった

但しヒオの時とは決定的に違っていたのは
目を開いたまま死んでいた。

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