夏休み
ごとっ、エンジンの心地よい振動から段差の衝撃で一気に夢から現実に引き戻された。窓の景色はいつの間にかビルやアスファルトの灰色から山や田んぼしかない緑色一色に染まっていた。どんな夢を見ていたのかを思い出そうとすればするほど、どんどん暗闇の中に逃げられてしまった。左から右に流れる景色のなかに見覚えのある建物を見つけて僕は人差し指を白いボタンへとやった。ピンポーン、聞き慣れた機械音と同時に前の方から「つぎ停車しまぁーす」と僕だけしかのっていないバスの中に声が響いた。プシューと空気の抜ける音がしてお金を払ったぼくは急な階段を下り、目の前の小さな木で作られた古いバス停に目をやった。後ろからはさっきと同じ音がしてドアがしまった。バスは所々破けて中のスポンジが見えているパイプ椅子と僕をおいて、次の目的地へと進んでいった。僕はバスと反対の方向へと足を向け、少しずつ歩いていった。今年で六回目の夏休み。大きな鞄のひもをかけなおした。ここに来るのは一昨年以来だ。何かにつまづいて転けそうになった。海に夏の日差しに祭りに花火、期待を胸に僕はおばあちゃんの家へと向かった。
感想
- 1619: どωな感じかな? [2011-01-16]
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