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ロストクロニクル3―13

[398]  五十嵐時  2008-11-11投稿
竹刀は竹を避けた二人を冷静な目で見ていた。
「油断大敵、避けても無駄よ」
「タクト!足下だ」
タクトが身を翻した瞬間、足下から凄い勢いで先の尖った竹が生えだしてきた。
「ウェド、これじゃあ切りがない。どうする?」
タクトが次々と生えだしてくる竹を避けながら、ウェドに問い掛けた。
「いい考えがある」
ウェドも同じく竹を避けながら答える。
ウェドがタクトに囁いた。
「このやろう!」
そう叫ぶと突然ウェドが竹刀の方へ走って行った。
「無謀なことをするわね」
竹刀はウェドと自分の間に無数の竹を生やして、竹の壁を作った。
「これで近づけないわよ」
作戦成功だ!
竹の壁で視界が遮られ、竹刀からこちらは見えない。
タクトは急いでシャープの周りの竹を切り、外に出した。
「タクトさん!」
シャープが心の底から安心した声を上げた。
「シャープ作戦があるんだ」
竹の壁の向こう側には竹刀がいる。
「あっちゃ〜、私としたことが、これじゃあ見えないわ」
竹刀が竹の壁を土に戻した時だった。
「今だ、行けっ!」
「覚悟しろ。竹刀!」
突然、目の前にシャープを背負ったタクトが飛び出してきた。
「奇襲のつもり?」 確かにいくらタクトでも遠過ぎる距離だ。
「さようなら〜」
再び竹の壁が作られようとしている。
「シャープ!」
「はい!」
シャープがすかさず氷の玉を杖から飛ばした。
タクトが走った分、スピードが増された氷の玉が竹刀めがけて一直線に飛んで行く。
「忘れてた。あの子、氷魔導師だった・・・」
再び竹の壁が作られた。
「当たったのか?」
竹の壁の前でタクトに聞く。 「分からない。シャープはどう思う?」
「揺れてたので・・・分かりません。当たっていたら凍っているはずです」
「・・・確かめよう」
タクトが不意に言い出した。
「本気か?凍った振りをしているだけかもしれないぞ?」
「フラットがいるかも知れない塔は向こう側にある。どっちにしろ、向こう側に行かなくちゃならない」
タクトが冷静に言う。
「確かにタクトさんの言う通りです」
シャープも賛同した。
「・・・分かった。タクト、竹を伐ってくれ」
タクトは黙って竹を伐り始めた。
竹の向こうには凍りついた竹刀が立っていた。

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