奈央と出会えたから。<274>
『家ではコンタクト外すから。
いつも眼鏡だよ。
それより質問の答えがなってないよ。
そのキズはどうしたのって聞いてるのに。』
『‥‥‥‥‥。』
『どうして黙ってるのよ?!何があったのよ‥‥聖人‥‥。』
あたしがした質問の答えを聞く前に、
あたしは、聖人に質問された。
『奈央‥‥オマエ本当に今日、何も無かったのか?!』
『さっき何もないって言ったじゃない。
それよりあたしの質問に先に答えてよ。』
あたしがそう言い終わるか、言い終わらないかのうちに、
聖人は、あたしの言葉をさえぎる様に、こう言ったんだ。
『今日は本当に何も無かったのか?!
本当に?!』
ビクンッ――
聖人の声は、ほとんど怒鳴り声に近くて、
あたしは一瞬、ビクッとしてしまった。
聖人の真剣な眼差しは、しっかりとあたしの瞳に映し出されている。
その切れ長のするどい目つきは、
あたしに向けられるトキだけは、
いつも優しい穏やかな目になるのに――
いつもと違う、そのするどい目つきに――
あたしは、既に聖人に嘘を見透かされているんだって悟った。
『‥‥呼び出された。』
呟いたあたしの言葉で、聖人の目つきは更に鋭さを増した。
『‥‥‥やっぱりな。3年の青山だろ?!青山サオリ。』
『‥‥‥うん。』
『あの野郎。さっきすれ違ったトキ、なんか様子がおかしいと思ったら‥‥‥。
奈央っっ。何された?!
青山に何されたんだ?!』
聖人は、両手であたしの顔を挟み込み、
真剣な目をして、顔を近付けて来た。
至近距離で見つめられたら、
もう、隠し通せなかった。
『忠告されたの。
聖人から手を引けって。
そして、図書室で聖人が3年の女のコと抱き合ってるのを見せられたんだ。』
あたしの話を聞いた聖人は、
納得した様にコクリと頷いた。
そして、ゆっくりと優しくあたしにこう言ったんだ。
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