十字路とブルースと僕と俺 9
ぼくは目がまわって崩れ落ちるように地べたに尻もちをついた。息はあがって身体はもわぁっと火照り出した。「なんで…」、乱れた呼吸を整えながら依然背中を向ける男を呆然と眺めていた。男は相変わらずこちらをちらりとも見ようとはせず、ギターを弾き唄を歌っている。
顔を見ようと右側からぐるりとまわり込んではみたものの、男とおれの角度はさっぱり変わることがなく、要するにおれは男の後ろ姿しか見ることができないでいた。何回ほどぐるぐると回ったのかは定かではないが、少なくとも遊園地のメリーゴーランド一回分よりは多く回っていたと思う。
ぼくは迷った。おとなの男のひとが考え込むように腕組みをして、どしりと腰を据えて地べたに座ったまましばらくじっとしていた。息はもうあがっていない。最初に此処に来たときよりも幾分胸のドキドキも穏やかになった。今、男との距離は1メートルにも満たない。またまわり込んでみるのもいいだろうし、声をかけてみるのもいいかもしれない。地面に落ちている小石を投げつけてみるもいいかもしれない。昨日からの一連の不可思議な現象うんぬんよりも、今は男の顔を見るということに強くひかれていた。
ぐるぐる回ってくたびれて、多少落ち着いて男をよく観察してみると顔の周辺だけがやたらと暗くなっていることに気付いた。男がこの世のものなのか、それともそうじゃないのか、そんな単純な疑問すら当時のおれの頭の中からはぶっ飛んでいた。
顔を見ようと右側からぐるりとまわり込んではみたものの、男とおれの角度はさっぱり変わることがなく、要するにおれは男の後ろ姿しか見ることができないでいた。何回ほどぐるぐると回ったのかは定かではないが、少なくとも遊園地のメリーゴーランド一回分よりは多く回っていたと思う。
ぼくは迷った。おとなの男のひとが考え込むように腕組みをして、どしりと腰を据えて地べたに座ったまましばらくじっとしていた。息はもうあがっていない。最初に此処に来たときよりも幾分胸のドキドキも穏やかになった。今、男との距離は1メートルにも満たない。またまわり込んでみるのもいいだろうし、声をかけてみるのもいいかもしれない。地面に落ちている小石を投げつけてみるもいいかもしれない。昨日からの一連の不可思議な現象うんぬんよりも、今は男の顔を見るということに強くひかれていた。
ぐるぐる回ってくたびれて、多少落ち着いて男をよく観察してみると顔の周辺だけがやたらと暗くなっていることに気付いた。男がこの世のものなのか、それともそうじゃないのか、そんな単純な疑問すら当時のおれの頭の中からはぶっ飛んでいた。
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