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ロストクロニクル3―14

[415]  五十嵐時  2008-11-13投稿
「凍っちまってるぜ」
「よし、今のうちに塔へ行こう」
塔は凍った竹刀のすぐ後ろにそびえていた。
「うわ〜、すげぇな。完全に凍ってら」
竹刀のすぐ横を通って塔の入り口の前に三人は立った。
「ところで、全然関係ないんだけど、シャープはフラットのことをよく知ってるみたいだけど?」
タクトがなんとなく尋ねた。
「私とフラットは幼なじみなんです。フラットがリコードに来てから。ちなみに、ここ、リコードには炎魔導師はフラット一人しか居ないんですよ」
ウェドは凍った竹刀をつついたり、叩いたりしている。
「だから・・・だから、フラットはいつも一人ぼっちで・・・だから、炎の魔導石を取りにこの塔に来たんだと思ったんです」
「炎の魔導石って取ったらどうなるんだい?」
「そうですねー。炎の魔導石は炎魔導師の潜在能力を飛躍的に引き出してくれるものなんです。まず、血液循環が急激に速くなり、興奮状態に陥ります。次に、魔導石が魔導師の体に触れると触れた表面積に比例して、魔導師特有の体の中にある伝達信号の速さが通常の約9.3527倍になり・・・」
「分かった。分かった。よ〜く分かったよ」
聞いたことを悔やんだ。
「そうですか。ちなみに氷、水、雷、あと空間の魔導石があります」
シャープは最後に学校で習いましたと付け足した。
「なんだか、暑くなってきていませんか?」
「そうか。何も変わってねぇだろ。それより、早く塔に登って、フラットを止めに行こうぜ!」
「本当だ!早く止めに行かないと!」
タクトが扉に手を掛けた時だった。
「あちっ!」
「なんだ、なんだかいきなり暑くなってきたぞ?」
「暑い・・・すいません・・・暑さには弱くて・・・少し離れます」
シャープは塔から離れた。
「おい!タクト、もう手遅れだ。塔から離れろ!」
ウェドが塔の扉の前にいるタクトの腕をひこうとしていた。暑さで竹刀の氷が溶けているのにも気付かずに。
「こっちに来い!」
ウェドがタクトを連れ戻そうとする。 「フラットはどうするんだ。フラットの目的がもし、復讐だとしたら?」
「考え過ぎだ」
竹刀の氷は溶けていく。
「もしかすると、竹刀がフラットに復讐を誘ったのかも」
「・・・二人揃って、何の話し?」
振り返るとそこには凍っていたはずの竹刀が立っていた。

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