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エリザベスドール?(8)

[441]  ぐうりんぼ  2008-11-18投稿
 夜…

 バーソロン邸は静かな雰囲気に包まれていた。

 応接間の中央辺りに置かれた大きなテーブル。

 その上に、奇妙な模様の赤い布がテーブル一杯に広げられている。

 テーブルの四隅にはそれぞれキャンドルが置かれ、火が灯される。

 黒いローブを着た老婆が1人、テーブルの前に置かれた椅子に腰を降ろした。

 教典を広げた老婆。

 手に十字架を握り締めたまま、祈祷を始める。

 アースルはテーブルから少し離れた場所に立っていた。

 老女祈祷師…セディ・ワトフの交霊儀式を見ているのだ。

 果たして…

 娘ジーナの霊は現われるのだろうか?

 人形騒動は治まった。

 後は…、

 この世を彷徨うジーナの魂の救済だけである。

 愛する娘が天国へ旅立って行かなければ…

 全ては終わらないのだ。

 時間は夜の11時近くを回っていた。

 風もないのに、キャンドルの火が揺れ始める。

 アースルの背筋に悪寒が走り始めた。

 何かの気配を感じたかのか…

 セディは祈祷を中断して、目を閉じた。

「来たようだね…」

 アースルは固い表情で辺りを見回す。

「どこに、いるんだ!」

「アースル、お前さんの方から呼んでごらん」

「ジーナ! ジーナ!
 どこにいるんだジーナ!?」

 セディが一緒になってジーナに呼びかける 。

「ジーナ、いるんだろう? 姿をお見せ」

「ジーナ!」

 すると…

 部屋の大扉がゆっくりと開いて、人型の半透明の物体が姿を見せた。

 まぎれもなく、人である。

 ゆっくりとした歩調で、こちらへ歩いて来る。

 ヘヤースタイル、顔の輪郭、体型…

 ジーナそのものである。

 物体は段々と、姿をハッキリとして来た。
 セディは立ち上がり、物体へと歩み寄った。

 相手に向かって手をかざしながら。声をかける。

「ジーナ・バーソロンだね?」

「ハイ…」

 ゆっくりとした口調で答えるジーナ。

 生きていた頃と同じ声にアースルは懐かしさを感じた。

 セディの質問は続く。

「今までお前は、どこで何をしていた?
 今から10年前に亡くなったから…本来なら今頃、神の元にいるハズだ」

「…」

「なのにこうして、アタシら前に姿を見せた」

「…」

 アースルが口を挟む。

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