時と空の唄10-4
町外れに佇む教会からは定刻を知らせる鐘が鳴り響きそれは港にも聞こえる。
「ランス兄ちゃん!」
「ランス遊ぼう!」
血の繋がらない弟妹たちは口々にランスォールの帰郷を喜んだがランスォールの表情はどこか堅い。
「マザーに話があるから終わったらな。」
と頭を撫でてやり、彼は教会の中へと入って行った。
コンコン、
「どうぞ。」
扉が開き、緊張気味にランスォールは部屋に入り、暫くは沈黙と文字を書くカリカリという音だけが部屋を支配する。
先に口を開いたのはマザーリラだった。
「冒険は、終わったのですか?」
終わってなど、いない。
「まだです。今日は近くまで寄ったもので。」
「そうですか。」
マザーは顔も上げてくれない。
「…それで、」
手紙を書く手を止め、マザーはようやく前を向きランスォールを見た。
「ここに来た訳は?」
「マザーリラ…
この教会の子どもたちはオレを含め皆、浄化能力者だ。」
マザーリラは無言で立ち上がり、今度はランスォールに背を向けた。
「何の話です?」
「しらばっくれないで下さいよ。マザーリラ。」
その言葉にマザーはフッと笑い、ランスォールに向き直る。
振り向いたマザーリラの表情にランスォールは驚きを隠せない。
そこに、ランスォール・ユードの知るマザーリラはなかった。
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