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幸運の女神 5

[643]  朝倉令  2006-06-20投稿


「よっ、久しぶり」



俺、倉沢諒司は、顔の汗を拭きながら演奏ブースから出てきた品川恵利花に声をかけた。



「あ、リョージ……」



俺の呼びかけに、こちらを見上げたエリカ。


その時、彼女の瞳に光る涙に思わずハッとさせられた。



「エリカお前、……どうしたんだよ?」


「…何でもないよ。
もう、終った事だし……」


「バンド解散したって聞いたけど、この前お店に来た女の子たちがメンバーか?」

「ううん、違う…
あの子たちは友達なんよ。 ところでさぁ、リョージ達っていつもここ使ってんの?」



そこで、蚊帳(かや)の外扱いにされていた康介が口をはさんできた。



「あ、ちょっとスマン。
二人だけの世界に割り込んでアレやけど、エリカちゃん、俺たちと音出してみねェ?この前ドラム抜けちまってさ。…どう?」


「あたしは全然いいよ?
スコア(楽譜)さえあれば」

「やりィ! ドラムマシンにはうんざりしてっからよ」



とんとん拍子に話が進む。


こういう時の康介は、関西生まれのB型らしく押しが強い。



エリカの気分転換には、この手の強引さが意外と良い方に作用するかも知れない。





「あれーっ!左利きが三人もいるじゃん。 …何だか変だよ?」



ギター 石島康介、左利き

ベース 倉沢諒司、左利き

ドラム 品川恵利花、左利き


「アッキー(昭彦)だけ仲間外れで可哀相だね〜」


「いえ、僕は左右両利きなんですよ実は」



キーボード 峠昭彦…両利き


「な、ケッタイなメンツやろ?」


康介が無意識に関西弁を使うのは、気分が乗ってる証拠だ。



俺は、高まってきたテンションをあおる様に、いきなりカウントを始めていった。



「んじゃ、一発いくか!
1・2・3・そりゃっ!」



ドッカーン!!てな感じで俺たちのプレイは始まっていた。








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