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少女の物語(3)

[253]  2008-12-04投稿
ある日、凜は彼の家に行ってお酒を飲みながら話していた。
突然、彼に抱きしめられた。

凜『…どうしたの?』
彼『いや…なんでもないよ。ただ、抱きしめたくなっただけ。』

その時の彼の顔は、明らかに曇っていた。しつこく聞くのは余り好きでは無かった凜は、あとは何も聞かなかった。

その瞬間、部屋の呼び鈴がなった。彼が外を覗くと、奥さんと子供がいた。
どうやら遊びに来たみたいだった。

2人はやばいと思い、凜は靴と鞄を持って、彼が玄関で奥さんと話している間にベランダから外へ出た。

部屋が、1階で良かったと凜は内心思っていた。

次の日、仕事であった彼が言った。
彼『家族が済む事になっちゃった…。』
凜『そっか。じゃあ、連絡取るのは控えた方がいいかもね…』
彼『そうだよね…』

仕事が終わり、帰り道に、奥さんとすれ違った。
『…ねぇ!!』
凜『え…?』
『…貴女、昨日部屋にいたでしょ?子供がベランダから出ていくのを見たのよ。たまたま私も外見たら貴女に似た人がいたから。…間違いだったら申し訳ありませんが。』

凜は、嘘をついても仕方ないと思った。だから素直に答えた。
凜『はい、いました。でも、もう行きません。仕事関係以外では連絡もしません。安心してください。…信じられないと思いますが。』

凜はそう言って走った。これでもかっていう位、走った。
そして、引き際だと思った。彼を愛しているからこそ、もう彼との関係を切らなければ、と。

数日後、偶然にも社員募集をしている部門があった。
凜は、応募して試験を受けた。結果は合格。1ヶ月後に異動になった。
東北から関西へ行く事になった。これで彼とはもう、会う事は無くなるだろう…と思いつつ、空港に着いた時、呼び止められた。振り向くと、彼が立っていた。
彼『凜の事は忘れない。絶対に!凜との時間は、俺にとっては掛け替えのない時間だったから…。』
凜『…さようなら!ずっと、愛しているよ…。』

凜は飛行機に乗って、1人で泣いていた。
関西について、凜は仕事に没頭していた。彼を思い出さないように…。
凜は決めていた。あえて、もう誰も愛さないって。
仕事に集中した方が楽だった。

なるべく人と関わらないようにする凜の日常が続いていく。

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