時と空の唄10-5
「あなたの第六感を育てたのはやはりあの娘かしら?」
冷酷なまでの笑みを顔に貼りつけたマザーリラ。
その表情には畏怖の念すら沸いてくる。
「シーラのことですか?」
「そう、シーラ・アレフォール…。
あの不吉なまでに澄んだ唄を唄う娘…。」
マザーに言われ、不意にランスォールは13年前のあの日を思い出した。
鮮血に染まる母、美しくも哀しい色をした夕日、揺れる銀髪、そしてあの唄。
「ランスォール、一つ教えておきましょうか。」
あの日、あなたの母親を殺したのは……
「あ、ランス兄ちゃん帰ってきたよ!」
マザーリラの部屋を出て教会内を歩いていると外で子どもたちの声がした。
そちらを向くと子どもたちに混ざってシーラと雪がいた。
「ランス、林檎買ったの。子どもたちにもあげたんだけど数が多くて…。
運ぶのも大変だから手伝ってくれる?」
シーラがいつもどおりの明るい笑顔をランスォールに向けた。
「あ、ああ。」
ぎこちない笑顔に戸惑いを混ぜて返した。
それでもシーラはいつもどおりに笑う。
ランスォールの心にはそれが何だか酷く痛んだ。
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