雪の華?
あれからたまに聖夜は桃実さんの所に連れて行ってくれた。
親とは接する機会が少なく、兄弟ともめったに会えないので
桃実さんが姉のように思えた。
「桃実さんはアレのどこが良かったんですか?」
「アレいうな…」
朱斐は、聖夜に多々連れて来てもらい桃実とはお茶友達になっていた。
「──……聖…はね、朱斐ちゃんと一緒だから…」
弱々しく桃実がゆっくり話す。
「一緒?どこがですか?」
桃実は、朱斐の問いに答えず聖母のようにただ優しく微笑む。
「???」
「時間だ…かえっぞ!朱斐」
「Σえっうん」
朱斐が帰ろうとした間際に、桃実がつぶやくように声を掛けた。
「いずれ分かるよ。朱斐ちゃん…」
「?」
帰宅時間ギリギリに帰ってきた。聖夜とは別に監視役の任を持つ者がいる。その他色々も。一日の中で、朱斐の自由な時間は限られている。
「間に合った〜帰宅時間一分遅れただけでグチグチイヤミ言われるからな〜」
「ま・間に合ったんだから良かったよι」
そうだなと言い、屋敷のドアを開ける。
「御帰りなさいませ、朱斐様…」
聖夜がドアを開け、朱斐と中に入ると、スーツを着た男が深々と頭を下げ出迎えた。
「く……黒峯」
「兄貴…」
二人を出迎えたのは、朱斐の前任の教育係黒峯だった。
朱斐が後退り、黒峯を見て動揺している。
「今日は社長の命を受け…参りました」
「父様…?な・なんの用件ですか?」
黒峯は中でゆっくりお話させて下さいと言い、三人は広間に移り、朱斐だけソファーに座った。
「これを…」
そう言い黒峯が、朱斐に黒い冊子のような物を手渡した。
朱斐は受けとり中を見た。
「これは…」
「──……朱斐様も十六歳におなりになったので……社長が見合いをするようにと…」
「はっ?」
二人の様子を見ていた聖夜が、つい声をあげてしまった。
「御見合いとは形だけで…朱斐様の…婚約者になる方です」
「…」
朱斐が黙って見合い写真を見ている。
しばらくして写真から顔を上げると、黒峯を見上げる。
「あなたが……」
あなたが私にそんな事を言うなんて…
「…」
私はあなたに会えて
胸が苦しくなるくらい嬉しかったのに
残酷な人
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