十字路とブルースと僕と俺 11
男の正面へこそ回り込むことはできなかったが、近づくことは可能なようだった。ぐるぐると回っていたとき、距離感が幾らか変化していたことを感じていた。角度は一向に変わらず、ずっと男は背を向けてはいるが、十字路に近づくことができたように、男へも近づくことができるようだった。
ぼくは手を伸ばせば男の肩に触れることができるところまで近づいていた。身体を止めどなく動かしている男から荒荒しい息遣いと、身体から立ち上る熱気を感じた。それは男が生きていると、そうぼくに思わせた。後ろから何度となくぼくを呼ぶ声が聞こえた。焦りと不安と緊張が頂点に達していた。ぼくは右腕を男の左肩へと、ゆっくり、ゆっくりと伸ばした。手が震えていた。ううん、全身が凍える寒さの中にいるようにがたがたと揺れていたのだ。
「………か」
右手は男の肩の10センチほど上を漂っていた。
「…ゎかる…」
身体が硬直した。ギターの音に掻き消されてはいるが、何かが聞こえた。ぼくを探してるみんなの声じゃなかった。
「…わかるか」
今のはちゃんと聞き取れた。それはぼくに向かって問いかけられていた。
おれに声をかけていたのは、無論、目の前にいる男だった。
ぼくは手を伸ばせば男の肩に触れることができるところまで近づいていた。身体を止めどなく動かしている男から荒荒しい息遣いと、身体から立ち上る熱気を感じた。それは男が生きていると、そうぼくに思わせた。後ろから何度となくぼくを呼ぶ声が聞こえた。焦りと不安と緊張が頂点に達していた。ぼくは右腕を男の左肩へと、ゆっくり、ゆっくりと伸ばした。手が震えていた。ううん、全身が凍える寒さの中にいるようにがたがたと揺れていたのだ。
「………か」
右手は男の肩の10センチほど上を漂っていた。
「…ゎかる…」
身体が硬直した。ギターの音に掻き消されてはいるが、何かが聞こえた。ぼくを探してるみんなの声じゃなかった。
「…わかるか」
今のはちゃんと聞き取れた。それはぼくに向かって問いかけられていた。
おれに声をかけていたのは、無論、目の前にいる男だった。
感想
感想はありません。
「 ティシュー 」の携帯小説
- 十字路とブルースと僕と俺 23
- 十字路とブルースと僕と俺 22
- 十字路とブルースと僕と俺 21
- 十字路とブルースと僕と俺 20
- 十字路とブルースと僕と俺 19
- 十字路とブルースと僕と俺 18
- 十字路とブルースと僕と俺 17