時と空の唄10-9
翌日は、ラウフに叩き起こされた。
雪も酷く慌てているようで落ち着かない。
「おいランス!!
昨日、シーラと何があった!?」
ラウフはランスォールの肩を掴み揺らした。
「シーラ、いないんだよ!しかも、こんな書き置き残して!!」
胸に押し付けられた羊皮紙にはきれいな字でただ二言。
ごめんなさい。
さようなら。
昨日の、ごめんなさい。と言ったシーラの声が蘇る。雨の向こうに消えた彼女の姿が目に焼き付いている。「シーラ…」
「ランスォール、何があったかちゃんと話せ。」
ランスォールは昨日のことを全て話した。
マザーのことも、あの日のことも。
「バカ野郎…。
そうやって、シーラを追い詰めたのか。」
追い詰めた?シーラを?
オレが?
「あいつは、お前の母親を手に掛けちゃいないんだ。殺した実行犯は、カロウドなんだ。」
まさか、でも…
「シーラさんの言った彼女を死に至らせてしまったというのは、守れなかった、ではありませんか?」
雪の言葉にハッとなる。
「じゃあ、シーラは今でも自分を責めてるのか?
十三年間ずっと、苦しみの中にいたのか?」
なのに、オレは――…
なんて、愚かだったんだろう。
オレは、どこまでもバカだった。
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