奈央と出会えたから。<295>
信じられなかった――
目の前にいるヒトが、
本当にミズホさんだなんて――
少なくとも、
あたしの知ってるミズホさんは、
こんな乱暴な言葉を使ったりは、しないから――
『ちょっと待ってくださいよ山下先輩。
いつ、龍二に“クサ”の話をしたんですか。
あたし、龍二にだけは、絶対知られない様にしてたのに‥‥‥。』
『いつ???
今だよ。たった今。
あんたが奈央と秋田谷をここに連れて来るトキ、あたしはこっそり後ろからつけてたんだよ。
フフフ。
もちろん、ICレコーダーに、コトの一部始終を録音させてもらったわよ。』
ミズホさんの言葉に、
青山さんは、かなりのショックを受けた様だったケド、
それも束の間。
やがて、
ひとつの疑問を投げ掛けた。
『ケド、山下先輩。
そのICレコーダーが、たった今録音されたばかりなら、
どうやって龍二に渡したんですか?!』
少し得意気な顔で、
青山さんがムキになって言った。
『バカよねぇ‥‥あんた。
その前に、何で卒業した筈のあたしが、ここにいるのかという疑問が先に立つ筈でしょう?!』
な‥なるほどっっ。
そう言えば‥‥そうよね‥‥‥。
どうして、ミズホさんがここにいるんだろう???
ケド、
ここにいるのは、ミズホさんの幻ではないコトは確か。
『青山ァ‥‥。
聖人の存在を忘れてもらっちゃ困るわよ?!
奈央ちゃんの王子様♪
ねっ奈央ちゃん?!』
そう言って、
ミズホさんは、ニッコリあたしに微笑みかけてくれたケド、
微笑み返したあたしの頬の筋肉は、
絶対引きつってたと思う。
『じゃあ、聖人先輩も、山下先輩と一緒に、あたしと成沢をつけて、ここまで来たってコトですか?!』
青山さんは、少し取り乱していた。
その、
あまりにも巧妙なミズホさんと聖人のやり方に、
やはり、
動揺は、隠せなかったらしい。
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