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幸運の女神 8

[561]  朝倉令  2006-06-24投稿


「俺つゆだく」「俺も!」
「僕は並で」


「あたし大盛りーっ!」


「…大盛りかよ」



とある牛丼チェーン店で、俺達は腹ごしらえをする事にした。



「いっただきまーす」



四名が一斉に横並びになって左手で箸を使う光景は、ちょっと人目を引いていたようだ。


新たに来たお客の、一瞬ギョッと驚いた顔が印象的だった。






「いやーっ、恐れ入りましたエリカ様」



石島康介が冗談半分に、品川恵利花を拝んでいた。


峠昭彦はいつもと変わらぬ笑顔でコックリ頷いている。



かく言う俺、倉沢諒司も彼女の歌唱力には、はっきり言って驚かされた。



「そう? バンドやんなくなって毎日カラオケ三昧だったからね〜。
 学校でもボイトレ(ボイストレーニング)やらされてたしぃ」

「学校?お前幾つだ?」


「来月で二十歳〜。
あ、別に高いプレゼントいらないからね〜っ♪」


「…エリカさん、それ絶対に要求してますよね?諒司クンに対して」


「いや、…なぜに俺な訳?全員っしょ」


「あらァ、悪いわねェ諒司くぅ〜ん」


「頼むから、ウチの鬼店長の真似やめてくれる?……」


「あんな美人を怒らす奴が悪いんじゃない?あはは」


「いや、……」




さすがに『原因はお前だ』と突っ込むのは思い止まった。




…突き詰めれば、全て自分の普段の行い(ナンパ好き)に端を発しているからだ。


それに、俺は本気でエリカの才能を買っていた。




あのドラムとボーカルが加わる事を思えば、プレゼントの一つやふたつ安い物、…
と安易に考えていた俺が甘かった。




まさに「後悔先に立たず」ってヤツだ。







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