携帯小説!(PC版)

さわるな。

[403]  アイ  2008-12-15投稿
ふれるな。

私にふれるな。

私の心にふれるな。

うずくまって隠す、何よりも大事な心臓。

ドクドクいってる。

私は恐怖に目を見開く。

さわるな、さわらないで……。

傷つくのが嫌だった。

せっかくここまで守ってきたのに。

生まれてからずっと大切に守ってきたものがあるのに。

世界に汚される。

ふれるな。

お前はふれるな。

汚い手でふれるな。

私の、何よりも大切な想いに。

貫いてきた生き方も。

信念も。

道徳も。

あざ笑いながら、奴らは奪ってゆく。

どうして。

涙が落ちた。

私はどこで間違えた?

心を守り損ねた?

染まってないはずだった。

私だけはと。

私だけは正しくあろうと。

たとえ周りがどんなに酷いことをしていても。

なのに。

結局、同じ。

私もただの人間だった。

ただのおごり。

私は一体何になろうとしていた?

神か仏にでもなるつもりだったのか。

――は、笑える。

それなのに私は。

相変わらず胸の辺りを抱き締めて。

心臓を。

腐った器官からなるそれを。

よどんだ血液が流れ下るそれを。

相も変わらず、守っている。



さわるな。

私にさわるな。

お願いだから。

もう何もなくさせないで……。

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