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ころしてください2

[697]  睦月  2008-12-16投稿
殺し屋に依頼した数日後、くたびれたスーツの男は死んだ。

死因は交通事故だった。
青信号の横断歩道を横断中に、老人の運転する軽自動車が猛スピードでつっこんできて、飛ばされ、頭を強く打って、死んだ。

男には家族がいた。
妻と、二年前に養子に迎えた、3歳の双子の娘。

近所でも会社でも、得意先でも評判の、仕事のできる優しい人間で、生前世話になった者がたくさん葬儀にきた。

その中に、殺し屋も来ていた。

黒い、真新しい喪服の殺し屋はすうっと潜り込んだ。
家の中は抹香くさかった。
その空間は、啜り泣く声で溢れていた。

座敷を見ると、ひとりの喪服の女がぼんやりと泣いていた。傍らには、ふたりの、黒い服の女の子が、横たわる遺体にむかって、たくさんのおままごと用のおもちゃを置いていた。

「パパちゅめたーい。」
「まーちゃ、パパさぶいからおきないんだ。パパ、とうみんしたんだね。」
「じゃああっためなきゃ」
きゃきゃ、と二階に行く娘たちを見送ると、殺し屋は
「すみません」

と部屋に入っていった。

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