十字路とブルースと僕と俺 13
8月14日
おれ達はこの日の夕方、おばあちゃんの家をあとにした。この日は朝から雨が降ったりやんだり、どっちつかずの天気が続いていた。おかげ様で、最後の一日をぼんやりと過ごすこととあいなった。あまりにも印象の薄い一日となったせいで覚えていることといえば、帰り際におばあちゃんから貰った新鮮な野菜(ねぎ)が車の中で臭気をいかんなく発揮したことと、昨夜のあの十字路でまた男を見かけたことぐらいだった。帰りの車の中で窓から顔を出し、遠退く十字路を見たとき、そこにあの男はいた。その時の男は、前の晩持っていたギターも、座っていたくたびれた椅子もなく、からだ一つでぽつねんと十字路に突っ立っていた。男はこちらをじっと見ていた。
たぶんぼくをじっと見ていた。男はじっとして、じっとこちらを見つづけていた。車がゆるやかに右に曲がり始め、十字路がじょじょに見えなくなる最後の瞬間まで男はずっとじっとしていた。
その後、男と会うことは一度もなかった。
おれ達はこの日の夕方、おばあちゃんの家をあとにした。この日は朝から雨が降ったりやんだり、どっちつかずの天気が続いていた。おかげ様で、最後の一日をぼんやりと過ごすこととあいなった。あまりにも印象の薄い一日となったせいで覚えていることといえば、帰り際におばあちゃんから貰った新鮮な野菜(ねぎ)が車の中で臭気をいかんなく発揮したことと、昨夜のあの十字路でまた男を見かけたことぐらいだった。帰りの車の中で窓から顔を出し、遠退く十字路を見たとき、そこにあの男はいた。その時の男は、前の晩持っていたギターも、座っていたくたびれた椅子もなく、からだ一つでぽつねんと十字路に突っ立っていた。男はこちらをじっと見ていた。
たぶんぼくをじっと見ていた。男はじっとして、じっとこちらを見つづけていた。車がゆるやかに右に曲がり始め、十字路がじょじょに見えなくなる最後の瞬間まで男はずっとじっとしていた。
その後、男と会うことは一度もなかった。
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