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空と君の間に10

[128]  ファントム  2008-12-21投稿
ただ考えてはいたが、篤志のプライドがそれを踏み留まらせていたのだ。
男は背もたれの高いソファーからゆっくり身を乗り出し言った。
「そうすればすべて解決するじゃないですか?何も彼女を騙すわけでもない。むしろ彼女はそれを望んでいらっしゃる。」
まさに悪魔の囁きだった。確かに風花は桐山との結婚を望んでいるし、金が必要だと言えば喜んで用立てるであろう。桐山は悩んだ。
「少し考えさせてくれ…」
桐山がそういうと男はニヤリと笑い、
「大事な事だ。当然お待ちしますよ。ただあまり桐山さんにはお時間は無いらしい。あまり時間がかかり過ぎると…おわかりですよね?」
「わかっているさ!」
桐山は声を荒げた。こういった境遇で金を返さなかった連中の末路は嫌という程見てきた。
「良い返事をお待ちしてますよ。おい!」
男は脇に居た若い男に指示をすると、若い男は帯封の付いた1万円の束を10個桐山の目の前に差し出した。
「ご結婚となると何かとお入り用でしょう。どうぞご用立ててください。」
桐山は屈辱を感じながらもそれを手にすると部屋を後にした。

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