十字路とブルースと僕と俺 18
母は、真剣かつ絶妙なあいづちを打ちつつ、祖母の話を聞いていた。姉も母ほどではないが、似たような身振り素振りで祖母の話を聞いていた。やっぱり親子だな、と思った。父はこの手の話を何回か聞かされているのか、半ば呆れ顔のような表情でうつらうつらとし始めた。というよりは、もうグロッキー寸前なだけかもしれなかった。
「お義父さんの夢?初めて聞くかもその話。ナニナニ?」
母は向かい合った祖母に、グイッと近づかんばかりに喰い付いた。母の眼はキラキラというか、酒を飲んでいる所為もあり、ギラギラとしていた。…なんかこえーって。
「仗之助さんね、若い頃からずっとギター弾いててねぇ、いつか自分のレコード出したいって言ってたの。でも、わたしとの間にこの子(父のほうを見て)が出来て、それですぐに結婚して、それでも農家やりながらずっとギターは弾き続けてたんだけど、こんな田舎じゃない。だからそうそうチャンスなんてなくてねえ。でも上手だったのよ。これはお世辞ぬきにね」
そこまで一息で言い終えると、祖母は目の前にある「でんでん太鼓」の入ったコップをゆっくり口に運び、これまた一息で飲み干した。
おれは、「へぇー、じいちゃんも音楽やってたのか。そこらへんはじいちゃんに似たのかな」、なんて思っていた。ボーッとしていた頭が突如廻り始めた。15年前、十字路にいたあの男。あの男はおれのことを知っていた。おれのことだけじゃない。「みんなも元気そうでなにより…」なんてこともたしか言っていた。それよりなにより、ギターを弾き唄を歌っていた。頭の隅にあった遠い記憶がたちまちに蘇り、おれはなんだか気分が悪くなった。
「お義父さんの夢?初めて聞くかもその話。ナニナニ?」
母は向かい合った祖母に、グイッと近づかんばかりに喰い付いた。母の眼はキラキラというか、酒を飲んでいる所為もあり、ギラギラとしていた。…なんかこえーって。
「仗之助さんね、若い頃からずっとギター弾いててねぇ、いつか自分のレコード出したいって言ってたの。でも、わたしとの間にこの子(父のほうを見て)が出来て、それですぐに結婚して、それでも農家やりながらずっとギターは弾き続けてたんだけど、こんな田舎じゃない。だからそうそうチャンスなんてなくてねえ。でも上手だったのよ。これはお世辞ぬきにね」
そこまで一息で言い終えると、祖母は目の前にある「でんでん太鼓」の入ったコップをゆっくり口に運び、これまた一息で飲み干した。
おれは、「へぇー、じいちゃんも音楽やってたのか。そこらへんはじいちゃんに似たのかな」、なんて思っていた。ボーッとしていた頭が突如廻り始めた。15年前、十字路にいたあの男。あの男はおれのことを知っていた。おれのことだけじゃない。「みんなも元気そうでなにより…」なんてこともたしか言っていた。それよりなにより、ギターを弾き唄を歌っていた。頭の隅にあった遠い記憶がたちまちに蘇り、おれはなんだか気分が悪くなった。
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