時と空の唄11-2
フォーと名乗る彼が聞きたいことなど大体の予想は出来る。
「……なんでしょう。」
しかし、彼が最初に聞いてきたのはシーラの予想を遥かに越えたものだった。
「あんた、年の離れた姉さんはいるかい?」
当然、シーラには姉どころか兄弟はいない。
「いません…けど…?」
困惑した表情で答えるとフォーは肩を落とし頷いた。「そうか…そうだよな。」
「あの…?」
「あぁ、悪いな。
人探ししてるんだ。
名前は憶えていないんだがあんたに、そりゃ生き写しかっつー位似ててな。」
そう言って彼が見せてくれた写真。
「もう20年近く前だ。
たったの一月だけど、ここにいた。」
真ん中の十六かそこらの少年はおそらくフォーで、フォーを挟むように立つ父親らしき男と笑顔で佇む少女。
「……。」
「見覚えないか?」
「鏡を見る度に映る顔ですね。」
それは、全くの本心。
少女はシーラ自身だった。ふと、自分が彼女であると伝えたら、フォーはどうするだろうかと思った。
信じてくれるだろうか?
あるいは、嘘だと否定するだろうか?
何故かはわからないがシーラは勝手に前者と決めつけた。
しかし、真実は言わない。ランスォールとの事で思い知った。
自分は、彼らと同じ景色は見られないと。
感想
感想はありません。