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時を感じて 『On your mark』 (1)

[286]  tororo  2008-12-27投稿


平成20年 12月27日


「今日でもう5年経っちゃったな、恵梨…。
あの時は、クリスマスプレゼント買ってやれなくてごめんな…本当に…。」

毎年この時期になると世界が滲んで見えてくる。
澄んだ世界を見るために努力はしているんだけど、なかなか成果は出てこないまま。
やっぱり時間とはそう簡単に比例しないものなんだろうか…。

年末ということもあってか、街はいつもより賑わっているみたい。
でも俺はこういう雰囲気苦手だ。
昔のような楽しい気分には、どうしてもなれない。
友達も俺を元気づけようと遊びに誘ったりしてくれるけど、全部断ってしまう。そんないつまでも尾を引きずってる自分自身に腹が立ってくる。

なんの気力も起こらず、ただボーっと飾られた写真を眺めていると、ある一本の電話がかかってきた。

「はい?」

「…もしもし、恵梨の母ですけど。」

「えッッ!?」

あまりに唐突過ぎる電話に、思わず声が裏返ってしまった。

「あッッどうも、ご無沙汰です。」

「そうね、久しぶりね。
シュン君元気だった?」

「元気ですよ。
お母さんこそお元気でしたか?」

「えぇ、私も元気よ。
…今日でちょうど5年経ったわね…。」

「…そうですね…。」

暫く沈黙が続き、なんだか気まずい空気になっていった。

「実は、渡したいものがあるの」

まるで沈黙を取り払うかのように、向こうから話かけてきた。

「渡したいもの…ですか?」

「いや、渡しておかないといけないものよ。」

「渡しておかないといけない…?」

俺は、なんのことだろうと考えていた。

「今日、家に来るんでしょ?」

「はい、焼香させてもらいに行くつもりです。」

「じゃあ来た時に渡すわね。
何時頃に来る?」

「昼くらいに行こうかと思ってました。」

「ならそろそろ出たほうがいいわね。
気をつけてね。」

「はい、ありがとうございます。」

電話を切り、恵梨の家に行く準備を始めた。
服を着替え、車のキーと財布と携帯電話、そしてお供え物を持って自宅を後にした。


道中の車内では、昔のことを思い出していた。
あの、辛くも楽しかった一日一日を…。

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