時と空の唄11-3
シーラは自分の写った写真をフォーに返した。
「不思議なもんだな。
あの時も彼女はあんたと同じようにあそこで雨に濡れてたんだ。
こんな所で何してるんだ、って聞いたら、何も、ただ行く宛がなくて座ってただけ、なんて答えてな。
…あんたもそうなのか?」フォーにそう聞かれシーラは首を横に振った。
「いいえ。
旅の途中でした。」
「へぇ…旅…。
どこに行くつもりなんだい?あんたみたいな娘一人で。」
一瞬、本当のことを言うか迷ったが、隠しきることも出来ないので目的地を言うことにした。
「…ヘトラレスタの谷。」
「え………」
長い、沈黙。
一方、ランスォールたちも一つ目の山中にいた。
「マズイな、だいぶ雨が強くなってきた。」
先程から激しくなり始めた雨粒が顔に当たって少し痛い。
「これじゃ視界も悪くて進むのは危険だ…。」
「かと言って、雨宿り出来そうな場所なんて…」
「ランスさん、ラウフさん!あれ!」
雪が叫びながら指差す方には明かりを灯した山小屋があった。
「しめた。暫く雨宿りだ。」山小屋からは歌や楽器の音、男たちの大きな笑い声が漏れだしている。
「ごめんください」
ラウフが戸を叩いた。
感想
感想はありません。