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死んでも好き 前編

[966]  2009-01-01投稿
「僕の事を好きになったら死ぬんだよ」
帰り道、俺の友達のTが言った。
俺はTと部活でいっしょで、Tはとても足が速く得点稼ぎが上手いので好きだった。
好きになると死んでしまうとはどういう事だろう。俺は笑って聞いてみた。
「なんで?」
「なんででもだよ」
即答されて少し変な感じだとは思ったが更に聞いてみた。
「なんだよ、Tみたいなウチのエースを嫌いな奴なんていねーよ。好きだと殺されるってんなら皆の生死に関わってくるんだぜ?なんで殺されるなんて思うんだ?理由を言ってみろよ」
「理由…」
「そう」
「理由なんてお前に言ったら殺されるよ」
「なんでだよ!!はは、なんでー?大丈夫だよ、え?それ俺が殺されんだよね?」
「…うん」
「だよね?なら大丈夫だって俺は!言ってみーよ!」
「死んでもいいの?」
「大丈夫だって」
「怖いよ?」
「…大丈夫だよ、俺強いから」
「………」
Tは黙った。俺はもうひと押しだとわーわー言ってTを丸め込み、彼に理由を話させた。が

「僕の家族みんな死んでるんだけどさ」

後悔した。

「じーちゃん達とその一人っ子の母さんと、親から縁切られた父さんと、あと兄さんと僕っていう家族だったんだけど親離婚しちゃってさ、母さんは他の人と結婚して中一まで4人で暮らしてたんだ」
「……」
「そしたらね、はは、夏休みに僕一時期拉致られてたんだけどその間にじーちゃん達と離婚した両親が行方不明になたらしくてさ、逃げ出して家に帰ったら兄さんがマジ一人で家にいんの」
「……え」
「信じられんだろ?行方不明の届け云々ははしょるけどその後その僕を拉致った人が家に尋ねて来てさ、『君の祖父母と両親は殺しました 付き合って下さい』って言ったんだよ、だからお前なんて嫌いだって言ったら『じゃあ死にます、君の事を死んでも好きです』って言って走ってどっか行ったんだ。5日後に新聞に5日前の首吊り死体が近くの山で見つかったって書いてあったんだけど」
「……」
「そっからさ。兄さんが事故で友達も二人死んだんだ」
「……マジだよな?じゃTは今一人暮らし…?」
「今は神社の仕事してるKの家に居候」
「……」
KはTの中学からの友達で、凄く仲が良い。Tは最初から無口で、ついこの間までkとしか喋っているのを見かけなかった。

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