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死んでも好き 後編

[875]  2009-01-02投稿
しかし俺はそんなTを強引に部活に誘ってそれから仲良くなった。
「聞かなきゃ良かった?」
Tは苦笑いした。
俺は馬鹿みたいに俯いてしまった。疑えない程話が嘘には思えなかった。
「まだ今んとこ高校じゃ知り合いは死んでないけど…そこでお願いなんだけど」
俺は頷いた。
正直段々話を聞きたく無くなってきていたが、俺が無理にお願いしたのだ。
本当に後悔した。むやみに人が話したがらない事を聞くのは罪だと痛感した。
「死んだ友達を僕は二人共好きだったし、好かれてた。兄さんもだ。だからね、〇〇、もし俺の事普通よりは好きって言ってる人がいたらその人に僕の悪口を言って、その人の名前を僕に教えて。」
俺は、そう言うTの表情が寂しそうで、友達も家族も失っているのにまた友達を失ってしまうと考えているTが可愛相で、つい元気づけようと安心させようと言ってしまった。
元々、幽霊なんて信じていなかった。

「そんなん偶然だ!お前の兄さんも友達もきっと偶然死んじまったんだよ、大丈夫だよ、その殺人犯は死んだんだろ?大丈夫だって、お前の想像より学校はお前の事好きな奴いっぱいいるし、死んでねーだろ?」
「…〇〇」
「心配しすぎで多分疑心暗鬼になってんだよ、好きになったら殺されるなんてそんなんある訳」
「やめろよ…」
「だってさ、俺お前の事結構好きだけど死んでねーし」
「……」
「俺今お前の話聞いてTの事女の子だったら告る位好きになったと思うぜ?だけどホラ、生きてんだろ?」
「や、めろ」
「だから好きになったら殺されるとか悪口言えとか言うなよ、寂し過ぎるってそんなの」
Tは俯いてしまって、震えていた。泣いてるのかと思った。きっとずっと寂しかったり辛かったりする事があったりしたから俺が慰めた事で泣いて少しは気が楽になればいいと思った。
けどTはただ肩や歯を鳴らして震えているだけだった。
「馬鹿…」
馬鹿。だってさ。
俺はよく分からないけれど笑って彼の肩を叩いた。
すると彼は足を滑らせて脇を流れていた浅い用水路にずるりと落ちてしまった。
結構間抜けな格好で落ちたので俺が笑うと、Tも若干恥ずかしそうに笑った。
すると後ろで何か声が聞こえた気がした。振り返るとそれはコンクリートを勢いよく踏み締める音に変わり、視界全体には大きな貨物トラックの前面が広がっていた。

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