RPG−15
「宝なんて知らない!あたしらは旅してるだけだ!」
男は必死に叫ぶレイを見て、そして後ろに控える巨漢を振り返った。
「こいつのツレ引っ張ってこい。女だ」
レイが唾をのみこんだのを見て男は口の端を上げた。男は人が絶望する姿が好きだった。
***
カナは目からぽろぽろと涙を流していた。ベッドに押し倒され、動かないように両手を体の下に入れられていた。目つきの鋭い男はカナの腰にのって更に自由を奪った。
怖くて怖くてしょうがないのに、助けての1言も悲鳴も出なかった。ただ泣くしかできなかった。
ヒグヒグ泣くカナを見下ろす男の顔が時々困った表情になることにカナは気づいていない。多くがそうであるように、この男も女の泣き顔が苦手だった。
「そのまま静かにしてろ。俺は味方だ」
味方?
「森の中で会った賊を覚えてるか」
森?賊?
ああ、とカナは思った。レイに俺の女になれと言ったあの山賊を思い出した。目の前の彼はあの男の仲間なのか。
「お前のツレが俺たちとはまた違う賊に捕まった。次はお前を狙う」
レイが捕まった?
カナの涙がぴたりと止まった。男は胸の内でホッとした。女の涙はやはり苦手だ。
「ツレも助けるが、まずは部屋を出る」
男はカナがかすかにうなずいたのを見て立ち上がった。ぐずぐずしてる時間はない。しかしカナの動く様子がないのに気づく。
「何してる。まだ信用できないか」
男が言った。しかし、すぐに何かおかしいと気づいた。カナは自分の体の下から手は抜いたが、そこから動かない。
「ち、違っ」
「早くしろ」
少しして、男はまさかという口調で尋ねた。
「・・・腰が抜けたのか?」
恥ずかしそうに真っ赤になってうなずくカナに、男は頭を抱えそうだった。
女2人を助け出せと言ってきた男の顔を思い浮かべ呪った。レイを気に入ったと言ったあの男だ。
しばし考えて、男はまたベッドに足を乗せた。ぎしっとスプリングがなった。
「ひ。や、や、あっ」
小さな悲鳴を無視して、男はカナをひょいと担いで肩にのせた。カナの顔が男の背中に向く担ぎ方だ。
カナは自分が風呂上がりで無防備な服装であることを思い出して、いつ顔から火が出てもおかしくないと思った。
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