RPG−20
「タームたちと一緒に行かないか」
「えぇっ?」
カナが思わず大きな声を出した。
***
アンの賊たちは数十人の手下を置いて逃げた。レイが倒れた男たちの隙間を見つけて歩いているときだった。
はっきり残る縄の跡をさすりながら、レイはニルバの後ろを歩いていた。横にはタームがいる。
「女2人でどこに行くんだ?」
「・・・ビヨド」
「そりゃあこの山を通るなあ」
「賊が張ってたなんて知らなかった」
レイがややうつむいて言った。タームはそりゃそうだと言って、でもと付け加えた。
「このアジトから消えたってだけで、あいつらが山を出たかなんて分からねえ。なあ、ニルバ」
「むしろまだひそんでる可能性の方がでかい。あいつらがそう簡単に宝を諦めるとは思えない」
レイは黙って聞いている。
「レイとお嬢ちゃんだけで山を抜けるなんざ、鮫が待つ沖に小魚が突っ込むようなもんだ」
レイは唇を噛んだ。事実、自分は相当危ない目に遭ったし、カナも危なかった。
「よってだ。俺たちと来い。船を使えばビヨドなんてスススのスだ」
ニルバが驚いて振り返った。だから山を降りろ、と諭すのかと思っていた。まさかこの馬鹿はさらに面倒をしょい込むつもりだとは。
しかも断ると思いきや、レイは頼みたいと承諾した。ご機嫌に笑うタームを張り倒したい衝動をニルバはなんとか抑えた。
***
「海」
「そう。山賊だと思ってたけどタームは海賊らしい。この山が通れないなら、海を渡るしかない」
カナはレイを、レイはカナを思い、その提案を受け入れた。ニルバ以外はその快諾に手を挙げて喜んだ。
***
「何を考えてるんだ!」
ニルバが言った。その目つきはもはや凶器だよと思いながらタームは目を反らした。
長い付き合いだが、一向にニルバの固さは抜けない。今もこうして2人を船に上げることに反対している。
「アンが狙う奴を乗せるなんて危険すぎる!」
だから俺たちが守ってやるんじゃないか。アンのボスの顔を見たレイは狙われないはずがなかった。
さらに言い募るニルバに、タームは両手を腰にあてて言い放った。
「俺はレイに惚れてるんだ!」
ニルバが頭をかかえた。だから仲間みんなを危険にさらすっていうのか?
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