RPG−22
「美味しい!」
カナがぱちりと目を開いた。船のコック・ムンが作る食事は驚くほど美味しかった。レイもすごいと言った。
「俺たちが誘ったんだ」
少年たち、シーク、ヨーク、ウーク、ネーク(名前の関連性はまだ聞いていない)が言った。
聞けば、職場条件は最悪だが腕は最高なコックをある街で見つけ、口説き倒して船に呼んだということらしい。
カナもレイも広いとはいえない部屋で大勢でご飯を食べるのは初めてて、窮屈だと思う以上に楽しかった。
***
お腹を満たしてマストにもたれて夜空の月を2人で見ていた。
「あんなに寝たのにもう寝れそう」
「もう?カナ、食べまくってたからな」
「だあって美味しいんだもん」
「あたしはまだ寝られそうにないなー」
「じゃあ軽く運動でもする?」
月明かりが影になった。視線を上げると、にこにこ顔のタームが立っていた。足音なんてちっとも気づかなかった。
「俺が付き合おうか」
「運動?」
カナが首をかしげた。確かに広い船体だが走るのは無理だ。体を鍛える器具でもあるのだろうか?
「お嬢ちゃんもする?3人かあ。いや、やっぱりニルバか誰か呼ぼう。いでっ」
また足音をさせずに今度はニルバが現れた。見えなかったが、状況を見ると、ニルバが頭を、レイが足を蹴ったらしい。タームがあいたたと言った。
「えっ?なんで?え?」
キョロキョロするカナの腕を掴んでレイが立ち上がった。部屋に入って、レイが赤い顔をしかめていることに気づいた。
先程の会話を頭の中でリピートしてカナも顔を赤らめた。タームの言っていた運動の意味が分かったのだ。
その夜、2人はそれぞれ海に関する夢を見たのだが、起きたときには覚えていなかった。
***
「カナ、起きて。ビヨドだよ。もう着く」
「え?夕方に着くんじゃなかったの?」
「波が穏やかで予定より速く進んだんだって」
部屋を出ると、港が見えた。賑やかで、明るい島だ。白いセーラーを着た水兵がちらほら見える。
白や淡い青色の建物がいっぱいだ。嬉しくなってカナはレイの腕に腕を絡めた。
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