携帯小説!(PC版)

トップページ >> 恋愛 >> 桜色の雪

桜色の雪

[547]  椿カオルコ  2009-01-06投稿
今年も桜色の雪が降る。貴女と私の唇に…。
それは切なく冷たい世間の風。私達は甘い吐息をお互い確かめあった。
決して愛してるとは言わなかった。貴女の少女のような微笑みに、私の胸は痛くなる。私は膨らんだ胸を押さえながら、自分の性を今日も呪った。どうして私達は、女の子なの?何故幸せになれないの?何がいけないのか、わからなかった。愛することに何故性が必要なのだろう。そんなちっぽけな愛が、何故世の中では普通なのだろう。
私達は子供の頃から、ずっと一緒だった。私達は魂の片割れだった。雪が降る度に、互いの身体を確かめ、暖めあい、無情を感じる。言葉にならない欲情と、理屈のない高鳴りに身を任せ、罪悪感にうち震える。誰にも言えない。公表することもできなければ、手を繋いで歩くこともできない。
その理不尽に身を焦がす。私達は小さなアパートで二人、ひっそりと暮らしていた。毎日のご飯と時折のお出かけ。この小さな幸せに私達は満足していた。でも幸せは長く続かなかった。彼女の両親が年をとり、生活できなくなったと、区役所から連絡があったのだ。私は泣いた。私はお世話をすることなんかできない。私達の関係は明らかなのである。告白も公表もしていないけど、私達の熱っぽいまなざしは、すべてを語っていた。私達はもう親の面倒をみる歳だ。私の両親はもう既に亡くなっていた。私には障害はなかった。このまま二人…年をとっていけると思ってた。
私達を愛し、育ててくれた親というものが、どれだけ重いか思い知らされる。彼女は微笑んだ。
「雪が溶けたら、また会おう。」
私達はまた長い冬を迎える決意をした。
二人で住んでいたアパートに、私は独りになった。雪が溶けたら…心の中で、ずっと呟いた。どれだけの時が経ったろう。私はお婆さんになっていた。私は彼女を待っていた。雪が溶けるのを待った。私は独り寒さに凍え、いつしか動けなくなっていた。気がつくと、彼女が私の唇に触れて泣いている。
「迎えに来たよ。両親を看取ったよ。」
長い冬だった。お婆さんになっても美しい彼女がいた。彼女は皺くちゃな顔で涙を流している。
本当に自由になれたのだ。何も気にすることはないのだ。私達は初めて口にした。
「愛してる。」
冷たい口づけだった。
季節は春。桜が舞っている。桜色の雪が溶けていく。私は彼女の魂となった。本当に一つになった。

感想

感想はありません。

「 椿カオルコ 」の携帯小説

恋愛の新着携帯小説

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス