RPG−26
「僕の本当の姿を知る人間は多くなくて、特に国は把握してない。というか知られたくないんだ。科学者は利用されるのを好まないから」
ディーシャは立ち上がって戸棚に並ぶ赤く光る液体が入った瓶を1つ手に取った。
「もうすぐ鏡の男の人が来る。僕は姿を変える。この薬でね」
そう言って、瓶を2人に見せた。ラベルも何もないが、どれが何か、分かるんだろうか。
「お姉さんたちは僕の友達ってことで話を合わせて。まあ、話かけられることはないと思うけど」
言い終えると、ディーシャはごくりと薬を飲み干した。慣れた仕草だった。
ぽんと白い煙が現れ、すぐに消えたかと思うと、そこにいたのは小さな男の子ではなく、カナたちと同い年くらいの女の子だ。
カナとレイは目を丸くさせた。カナの方は声も出ないが、さすが魔王なんかがいる世界。レイはすぐに冷静になった。
「魔法みたいだな。初めて見た。で、あの銃を持った奴は何だ?」
「警察だよ」
「警察!?」
カナとレイが同時に言った。これにはレイも驚いている。協力するとは言ったが、相手が警察だなんて聞いてない。レイが何か言いかけた時、ドアがノックされた。
***
確かにその男は警察官だった。レイを見て、カナを見て、そして少女の姿になったディーシャを見た。
「ディーシャ殿はおられるか」
「いないよ」
ディーシャが間髪入れずに言った。警官は眉をひそめた。怪しいと思ったのかもしれないし、失礼なと憤慨したのかもしれなかった。
「何度来たってディーシャは会わないよ。国の戦争を手伝うなんて趣味じゃない」
「ディーシャ殿がそう言ったのか」
「分かるんだよ」
「お前たちは」
「ディーシャの遠い知り合い」
警官の質問を先回りしてディーシャが答えた。
慣れているのか、会えないと端から諦めていたのか、警官はよろしくお伝え下さいと言ってあっさり出て行った。
ドアが閉まると、カナはふうと息をはいた。ほんの5分程度だったが、どの世界でも警官というのは緊張させる。
レイが組んでいた腕をといて鏡を見た。警官の後ろ姿が映っていた。
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