RPG−27
「いいのか?警察に嘘ついて」
レイが言った。ディーシャがまた薬を飲むと、さっきと同様、煙が消えるとそこには元の愛らしい姿の男の子がいた。
カナはそれを見てまだびっくりしているのだが、レイは慣れたらしく、もう驚いていない。
「言ったでしょ。僕は国の戦いの為に科学を使うのは嫌なんだ」
「あの」
「なあに?」
カナがおずおずと声をかけた。こちらを見上げてくるディーシャはやはり可愛らしい。
「今の姿は本当の、なの?」
「そうだよ。僕は隠れていたいわけじゃない。相手を選んで姿を変えるんだ」
「わたしたちには見せて良かったの?」
ディーシャは空っぽの瓶を箱に詰めた。
「害のない旅人さんって感じだったから。それにもしお姉さんたちが悪い人だったとしても、なんとかして記憶を飛ばすから大丈夫だよ」
大丈夫って?さらりと物騒なことを言われた気がしたが、気にしないことにする。
「あの、姿を変えるって、なんだかおかしくない?」
「おかしい?」
ディーシャは首をかしげた。
「だって、科学を守りたいからってディーシャくんが隠れなきゃいけないなんて変だよ」
「言いたいことは分かるよ」
「そうやって受け入れるのも変だよ」
「お姉さんは優しいね」
そう言って笑う顔を見るのは嫌だった。子供らしくなさすぎる。
「この街から出ないのか?」
沈黙を破ったのはレイだ。カナは顔を明るくした。こんな大きな街でなく小さな村に行けば、国が関わってくることもなくなるのではないか。
ディーシャは小さく口をとがらせた。愛らしい仕草だ。
「それは僕も考えたよ。だけど1人で動けば見つかっちゃうだろうし、手伝ってもらえば、その人が危険だよ」
国が見張ってるからね、と付け加えた。
少しして、ディーシャがぱっと顔を上げて、2人を見た。
「豊富な材料が揃うこの街を去るのはやっぱり惜しいけど。うん、出よう」
「うんっ。ディーシャくんが隠れなくちゃいけないなんておかしいもんね」
「街を出れば知らない材料が見つかるかもしれないしな」
2人でノリ気になったディーシャの背中を押す。
街を出られない理由を言っていたが、それはどうなったのだろうとカナはちらりと思ったが、それはすぐに分かることになる。
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