RPG−29
「あ?カナじゃないのか、あれ」
ムンと買い出しに出ていたユーラが呟いた。まさか本当に誘拐してきたんじゃないだろうな、とちらりと思う。
「カナ?おお、ほんとだ。レイもいるね」
「だよな」
老眼鏡をくいと持ち上げてムンがうなずいた。高台に生える薬草を採りに来ていた。船もよく見えた。
「よくニルバが許したなあ」
「タームが言ったと思うか?勝手に決めたんだよ」
「なるほど」
ムンが笑いながら言った。タームの勝手に振り回されるニルバの苦労を思うと、その笑顔も引き攣った。
***
ぽすんとベッドに倒れ込んだ。昨日寝た空き部屋を3人の部屋にしてもらった。カナ、レイ、ディーシャの3人だ。
小さなベッドを2つくっつけて3人で川の字で寝る。シークたちが俺も俺もと言ってきたのを思い出して、カナはくすりと笑った。
カナは、ディーシャがカナの問題を解決しなくて良かったと思っている。まだここにいたかった。
この世界を本当に好きになっていた。
***
「ありがとう」
それを聞いて、タームは目を丸くしてレイを見た。船のヘッジにもたれて2人で並んでいるときだった。
「こんなに助けてもらうなんて。海賊は奪うだけだと思ってた」
気恥ずかしさでこっちを見られないのか、レイはまっすぐ前を向いて海を見ている。タームはその横顔に見とれた。
「まだガキだけど、働くから。重荷にばっかなる気はないから」
「ああ、期待してるよ。手始めに今晩、俺と」
言い終える前に、カナが肩をパンチ、シークがカンチョーをした。振り返れば、シークをけしかけたと思われるニルバが立っている。
神出鬼没、とタームは呟いてお尻を押さえて座り込んだ。
「あんたには迷惑かけるな。ほんと、ありがとう」
ニルバはよくやったというようにシークの頭を叩いた。レイの言葉にはああとだけ返した。
「俺は嬉しーよ!」
シークがレイの腕を取ってぶらぶらと揺らす。甘えた仕草にレイは気恥ずかしくなる。こんなにも懐かれるなんて。
なにより自分はお姉ちゃんというようなキャラじゃない。よくて姐さんだ。
まあ、こんなふうにされて嫌というわけじゃないが。カナとはまた違う頼られ方は、こそばくて、少し嬉しい。
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