RPG−30
タバコの煙を吐き出すと、女は細く白い手を顔に添えてきた。長いまつげを伏せて、そして真っ赤な唇を近づけた。
ユーラは女の頭を持って、何度も角度を変えキスをした。半眼を開いて女を見れば、うっとりしたなまめかしい表情をしている。
服に手を触れると、待ちきれないというように女が脱ぎだした。焦りすぎだと耳元で言えば、くすぐったそうに身をよじった。
***
冷たい夜風が熱を持った体に気持ち良かった。タバコの煙が狂ったように伸びて消えていく。
夜中、ユーラが街から戻るとすぐに船は動き出した。出発は朝まで待つ予定だったが、ニルバが穏やかな波がもったいないと言ったのだ。
壁にもたれてぼうっとしていると、足音が聞こえた。振り返る前にニルバが隣に座った。
「匂うな」
何がと言いかけて、ユーラはああと思った。自分についた女の匂いだ。確かに今日の女は濃かった。
「敏感だねえ」
「シークだって気づく」
「そんなに匂うか?」
ユーラが胸元の服をつまんでくんと匂いだ。
「上手く行けば昼前に島に着く」
「セカ島な。宝、あるといいな」
「アンとかち会わなければもっといい」
「会わないだろ。セカ島を知るのは俺たちぐらいだ」
タバコの火を消して箱に捨てた。1度、海に捨てるところをニルバが見て、どこからか金属の箱を見つけてきた。以来、ユーラの喫煙場所はこの箱のあるマストの下と自室だ。
「アンはまだあの山を張ってると思うか」
「頭はもういないだろうな。手下が残ってる可能性は高いだろうが」
ニルバは、ホテルでカナを押し倒したことを思い出した。声も出せないほどに怖がっていた。
「本当にあんな山に宝のヒントなんてあると思うか?」
「まずないだろうな。あいつらも捜す手がかかりをなくして、あの山に入り浸ったんだろう」
「山を通る旅人襲うなんざ、ありゃ完全に宝が見つからない八つ当たりだな」
カナの泣き顔を思い出してニルバはかすかに顔をしかめた。女、しかもまだ若い女を泣かせたというのは嫌な記憶だ。
「寝る」
「おう。交代の時間までには起きてこいよ」
ユーラがひらひら片手を振った。
見上げた夜空に浮かぶ雲が髪の長い女に見えた。何十人という女が頭に浮かんでは消えた。
感想
感想はありません。