奈央と出会えたから。<300>
『龍二、ごめん。
あたし‥あたし‥‥。』
青山さんは動揺していた。
そうだよね。
言い訳すら、
考える余裕もないくらいに、
聖人とミズホさんの動きが早かったから。
『言い訳なんて聞いてねぇよっっ!!
てめぇ、よくも俺に恥をかかせてくれたな?!
俺は、てっきり聖人がオマエにちょっかい出したんだと思って、殴っちまったじゃねぇか!!
聖人は、俺が見込んだ唯一の男なのによ。
俺の後に、“魔羅威夜”を継いでもらおうとまで考えていたんだ。
それなのに、
俺は一瞬でも、自分が惚れ込んだ男のコトを疑っちまった‥‥‥。
サオリ。てめぇみてぇなクソ女に騙されるとは、俺も大したコトねぇ男よな?!』
京谷さんは、
金色の前髪を、ふわりとかき上げた。
その、
長い指先の間から見えた、するどい二重の瞳と、
整った鼻筋から、
青山さんが彼女になる以前から、
女のコの追っかけファンがたくさんいたという噂が、
改めて納得出来た。
その妖しい魅力は、
一体どこからくるものなのか、
聖人とミズホさんより2コ上の高3だって話は聞いていたケド、
なんか、
すごく大人の男のヒトって感じがした。
でも聖人の方がカッコイイもんっっ。
『龍二!!ごめん!!許して!!あたしを捨てないで!!
もう‥‥“クサ”の栽培も売りもやめるからサ!!』
青山さんは、
涙をぼろぼろ流しながら、
京谷さんに抱き付いた。
ケド、
京谷さんは、そんな青山さんの腕を振り払ったんだ。
『‥‥終わりだ。
てめぇとは、もう終わったんだよ。
女のてめぇを殴るワケにはいかねぇ。
とっとと俺の前から消えろ。
2度と俺の前にツラ見せんな!!』
『り‥龍二‥‥う‥‥‥あ‥‥あ‥‥。』
青山さんは、
その場にしゃがみ込んで、泣き崩れてしまった。
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