時と空の唄11-9
「『土濤 泥池に沈め』!」シーラが叫ぶと泥の波が黒スーツに覆い被さるように襲いかかった。
「よし、こっちだ!!」
フォーはシーラの手を掴み茂みの中を走った。
ガサガサという音が耳に届いてはまた遠くなる。
後ろからは黒スーツが追いかけてくる。
「この中に!」
突き飛ばされるようにして逃げ込んだのは小さな穴。二人がようやく入れるサイズで、隣からは息切れしたフォーの息遣いが聞こえてくる。
ドタドタという数人の足音と共に黒スーツは去った。
「行ったか…」
安堵の溜め息が漏れた。
「今は…何も聞かないで下さい。なぜ追われてるのかとか、何者なのかとか。」言わなければならない事は山のようだ。
でも、まだ言えない事も山のようなのだ。
「ごめんなさい。」
それだけ小さく言い、シーラが先に穴を出た。
「いや、誰にでも言えない事はある。
それより、先を急ごうか」2日程度で谷に抜ける、と言い二人はまた山の中を進み始めた。
そういえば、とシーラの脳に初めてランスォールと出会った時のことが蘇る。
あの日も追われていたシーラの手を取り、救ってくれた。
さっきはフォーに握られていた手を見て、シーラはまた前を向き歩いた。
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