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ロストクロニクル6―5

[423]  五十嵐時  2009-01-13投稿
ドローは我に返ると慌てて扉を閉めた。
「何なの?あれ」
「ムシさ」
さらっと答える。 「分かってるわよ!」
シャープは焦っていた。それは顔にも態度にも出ていた。 ドローが打開策を考えていると、その考えを断ち切るように扉を突き破ろうとする音が聞こえてきた。
「どうするの!」
シャープとドローは扉を背中で押さえ始めた。
「この図書室は隣のクラスの部屋と繋がっている。あの扉だ」
ほぼ反対側に扉が見える。十メートルほど先だ。「クラスさんって誰?」
扉を壊そうとする音は容赦無く続いている。
「今それを聞きたいのか?」
「そんな訳無いでしょ!」
「冗談じゃないか」
笑いながら言うとドローの顔は今までとは全然違う真剣な表情になった。
「いいか。1、2、3で行くぞ」
「うん」
シャープもドローに習い顔を引き締めた。
「・・・1」
ドローは静かにカウントを始めた。
「・・・2」
脈拍が全身を伝う。
「・・・3!走れ!」
走り出すと同時に扉は壊された。
「振り向くな!」
振り向きかけたシャープに少し前を走るドローが叫んだ。
無数のムシの追いかける足音が恐怖を煽る。
「早く来い!」
ドローは既に到着し、扉に手をかけていた。
その時、一匹のムシがシャープに飛び掛かってきた。
ドローがそのムシに杖を投げて撃退した。
「閉めて!」
シャープが飛び込むと強く扉を閉めた。だが、強すぎたために扉が外れてしまった。
しまった!
ムシはもう手を伸ばせば届きそうなところまで来ていた。
これ以上逃げれそうにもなかった。
「もう一度閉めて!」
言う通りに閉まるはずのない扉を元の場所にはめた。
「退いて!」
飛び込んだままの倒れた状態で急いで扉を厚い氷で固定した。
「ふぅ〜危なかったな」
ドローはシャープに手を差し出した。
「でも、わたしの魔法は長く持たないわよ」
ドローの手をかり、立ち上がりながら教えた。
落ち着いて辺りを見渡すと扉のすぐ横に杖が三本刺さってあった。
壁にはたくさんの油絵が飾ってあり、身の回りの物も几帳面に整頓されていて、綺麗好きな人の部屋なのは一目瞭然だった。
「こんな部屋、落ち着かないよな」
ドローが同調を求めてきたが、シャープにはむしろ心地のいい場所だった。

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