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夕焼け〔終〕

[399]  ニコル  2009-01-15投稿
並木道には、すぐ近くの工場の煙からの淀んだ風が吹き込んできていた。


「昔はここいらにも、もっとたくさんの木々が生えていたんだ。」
おじいちゃんが僕に語りかける。



辺りを見渡すと、無造作に建てられたビルや住宅地が目に入った。


見上げると、空ではちょうど太陽が沈み始めていた。


真っ赤に染まった空の真ん中には、淀んだ空気が重なり、黒くかすんだ夕日がぽっかりと浮かんでいた。


「俺は夕焼け空が大好きだったんだ。」


おじいちゃんは少し悲しそうに言った。







それが僕とおじいちゃんの最後の会話だった。






おじいちゃんはそれから一週間後にこの世からいなくなった。








数週間たったある日、僕は再び順平の家に挨拶に行った。




縁側には、当然おじいちゃんの姿はなかった。



からっぽの池には、うっすらと苔が生え始めている。



僕はあらためて確認した。







もう真っ赤な夕焼けが帰ってくることはないのだと。

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