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何歳(いくつ)になっても(11)

[385]  内田俊章  2009-01-17投稿
午前4時、翔子の携帯電話が鳴った。翔子は、寝ぼけながら片目を開け、携帯を開いた。純子からのメールだった。「夜が明ける前に帰りなさいよ」と書いてあった。翔子は、何の事か分からず、もう片方の目も開けて読み直し、そして周りを見渡した。(えっ、どこなのここは?) 翔子が上半身を起こすと、ソファーで寝ている賢介が目に入った。翔子は二次会迄は覚えているが、その後の記憶が全くない。ただ、ここがホテルの一室で、賢介と二人きりなのは事実だ。翔子は、きっと酔いつぶれたんだろうと思った。そして、自分の服装を確かめたが、着のみ着のままで、賢介も昨日のままだった。翔子は洗面所の鏡で、自分の顔を見た。多少頭痛はするが、顔色は普通に戻っていた。翔子は髪をとかし、服装を直して部屋へ戻り、賢介の側で膝まづいた。賢介は未だ寝ている。翔子は、賢介の頬にそお〜とキスをした。そして頬擦りをしてから、唇をかさねた。
賢介は目を覚ました。「ああ、翔子!」賢介は上半身を起こし、翔子を抱き寄せた。翔子は、賢介の胸に顔を埋め、賢介は、翔子の髪を優しく撫でた。(「後は自分たちで責任を持ちなさいよ!」かあ)賢介は、純子に言われた言葉を思い出していた。(俺達は、責任を取らなければならない事等、何もしてないぞ!) 翔子は、酔いつぶれた自分を、そのまま寝かせてくれた賢介の優しさが嬉しくて、賢介と同じ事を考えていた。「さっきね、純子からメールが来たの」「メール?こんな時間に?で、何だって?」「『夜が明ける前に帰りなさいよ』だって」「そうか。あいつには余計な世話を掛けちゃったな!それじゃあ、ご忠告通り、帰ろうか?」「うん」
二人はホテルを出た。空は少しだけ白んできていた。二人はタクシーを拾い乗り込んだ。「こんな時間に帰って、奥さんに何か言われない?」「出張で留守が多いし、接待で遅くなる事も多いから、平気さ。翔子こそ大丈夫か?」「大丈夫じゃない。いざとなったら、純子が居るから!」「そうだったな。アリバイ工作、成功、ってか!」二人は顔を見合わせて、笑った。「運転手さん、そこの坂の手前で停めて」「ここで降りるの?」「俺はここから歩くから、翔子は家の前まで行ったらいい」「そうか、有り難う。じゃあね!」どこまでも優しい賢介だった。翔子は、そおっと家の中へ入り、ソファーに横になって、又眠りに落ちた。

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