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○●純+粋な恋●?

[733]  沖田 穂波  2009-01-18投稿
純+粋な恋

1-?[春の墓]

春らしい
暖かい日の光は,
八畳ほどの和室を明るく照らしていた。

机が並べられ,それぞれの場所で子供が習字に熱中している。
1人の子供が,
たった今書き終えたばかりと思われる物を,
何か楽しげな様子で若い男の元へ持って行った。
『師匠,見てみて!
隣の家の猫描いたよ』
そこには半紙一面にいびつな猫の顔が。
若い男はそれを見て柔らかく微笑み,
『これはこれは,
そっくりですねぇ,
とても,上手です。』
と,子供の頭を優しく撫でた。
そして,
『では次は,
猫ではなく字をかいて
みましょうか。
私がお手本を見せまし
ょう』
と言った。
子供は男の手本を嬉しそうに眺め,
『うん,かく!
師匠の字かく!!』
と,子供はまた自分場所へ戻り,男の書いた手本を真似して書き始めた。
若い男の名は[淡矢純]。
年齢23にして書道の名人だった。その業界の人々は,100億に1人の天才として一目置いている。
ここは純が開いた子供の為の書道教室である。

さて,
書道教室はそのまま午後まで続き,
全ての子供が終わった頃にはすでに日が傾き始めていた。
最後の子供を返し,
純はすぐに家を出た。
日課の散歩に行くのである。
季節変化を感じながら家の周りをのんびりと歩く事が,純のお気に入りなのだ。

爽やかな春の風が純の体を包んだ。
羽織りに風が入り込む。
純は和服しか着ない。
『のどかだなぁ‥』
心からそう思った。
風が吹く度桜の木の枝が重く揺れる。
遠くに見える田の稲も波打ち,時折きらりと光った。

そんな桜並木1人に,座り込む女がいた。
何をしているのだろう。
肩や頭には桜の花びらが落ちている。
もしや具合が悪いのではと,純は近付いた。
『あの,どこか具合でも
悪いのですか?』
女は驚いた表情で振り返った。その時,付いていた花びらが舞った。
『あ,すみません,
ご心配かけてしまって
具合は悪くないんです
墓を‥作っていたので
す。』
『墓?』
『はい,ツバメのヒナだ
と思います。
可哀想に,何だか放っ
ておけなくて‥』

美しい女性だ。
容姿だけでなく,
女の性格からも純はそう思った。

●○続く○●

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