時と空の唄12-1
「あの、レミスさん。」
小屋の中に声を掛ける。
しかし、レミスからの返事はない。
「親父。」
フォーが言った。
「なんじゃ、フォーか。
わしのことは親父などと呼ぶでない。」
「え?」
シーラが聞き返した。
「レミス爺はフォーのホントの父ちゃんじゃないんだって。」
そっとシドマが耳打ちした。
「血の繋がりなんざどうだっていいんだ。あんたは俺を育ててくれた。それだけで親父と呼ぶに値する。」レミスは大きな竈の前で暫く黙っていた。
「…出ていけ。」
「出ていかない。シーラの話を聞いてくれよ。」
フォーの言葉にレミスの態度が変わった。
「シーラ…?」
「ああ、彼女だ。」
シーラの姿を見たレミスは目を見開き、信じられないと呟いて彼女を見つめた。「お前さん…まさか」
面影が重なる。
「シーラ・アレフォールなのか?」
「親父、知ってるのか?」
「知ってるもなにも、お前も知ってるだろう?
お前と彼女は…」
「レミスさん、それ以上は…」
「…ああ。そうじゃった。ここから先は契約に反するな。」
「契約?契約ってなんだ?俺がシーラを知ってるってどういう…」
言いかけてはたと止まった。
「まさか…でも…」
気付かなくて良いことも、世の中にはあるのだ。
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