○●純+粋な恋●?
2-? 春の陰
粋乃の弟,拓和の通う,書道教室が長期休業となったのは,
純と桜並木で出会った,3日後の事である。
どうやら師匠の体調が悪いらしい。
拓和は,楽しみが1つ減ってご機嫌斜めだ。
『書道行きたいよぉ。』
拓和は何度もダダをこねた。
『そんな事言ったって,しょうがないでしょう。師匠の体の具合が悪いのだから。』
粋乃は,拓和を抑えこもうとしたが,なかなか諦めてくれない。
ついに,しびれを切らして粋乃は立ち上がった。
『しょうがないわね,付いてきなさい。』
†
純の目が覚めたのは,
吐血した次の日の昼である。
『純,目が覚めたか。』
京太郎は純の顔を覗き込んだ。
『だいぶ顔色が良くなったな。』
『に,兄さん。あれ?私はいったい‥。』
京太郎に体を支えられながら起き上がり,
辺りを見回した。
そこは見慣れた純の部屋だった。
『血を吐いて倒れたんだぞ。覚えてないのか?』
『あ,そうでした,
何だかぼーっとしてしまって。』
純は目をこすった。
左腕には点滴が付けられている。
京太郎は,純の点滴を指差しながら,
『それはきっと,薬のせいだろう。』
と言った。
― どうりで体が軽い訳だ‥。
自分の腕についている痛々しい点滴を見ながらそう思った。しかし,
『あの,教室は‥』
純の気がかりはそれしかない。
『教室は私が皆に連絡して長期休業にした。だからお前は,ゆっくり療養しなさい。』
純の心を京太郎は見透かしている。
こうでもしなければ,純は無理してでも教室を続けるだろう。
子供達の為,どんな時も尽くしてきたのだ。
『‥はい。』
この純の力無い返事を,
京太郎は辛いな思い出として,いつまでも忘れる事ができなかった。
●○続く○●
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