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恋の迷宮

[457]  超ナタデココ  2006-07-03投稿
ある、雨が降っている、その日。
日は西へと過ぎ去り、雲の隙間から月が顔を出す夜。
暗く、暗く、暗い――
街灯は点いていても、寝静まり始めた町は、暗い。
その漆黒の中を、少女は走っていた。
ザァァッと降りしきる雨を、淡い色をしたネオンが照らす。
少女が走るたびに、水溜りが音を立てて跳ね上がった。


「どぉしよう。みんなとはぐれちゃったよぉ……」
はぁはぁと多少肩で息をしつつ、少女は走り続ける。
弱気な声を上げつつ、彼女は辺りを見回してみる。
完全に夜に包まれた町。
人一人、見当たらない。

彼女は高1の陸上部マネの夏美。
その日は、学校ではなく、少し離れたところにある競技場で練習があった。
マネとして最後まで仕事をしていた彼女は、
気づいたときには周りとはぐれてしまっていた。
仕方なく、一人で帰ったのだが、初めてきたその場所に、迷ってしまったのだ。
「これじゃバス停わからないよ。
 ここがどこかわからないし……ヤバッ、帰れないかも」
サァァァッと小雨が降りしきる。
その音は、彼女の小さな呟きを覆いこむと、なおもなり続ける。

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